001_04_理沙と彩名ママとの間のリスク認識

「でも」

彩名は理沙をまっすぐに見た。

「恵梨香のことなんだけど」

声は落ち着いている。

「最近、何か気づいたことある?」

理沙は少し考える。

「……売り上げ、伸びてるし」

「うん」

「ナンバー1だし。自信がついたとか、そういう変化なら」

彩名はゆっくり首を振った。

「そこじゃない」

壁越しに、フロアの笑い声が響く。彩名は腕を組んだまま言う。

「阿久津の動き、見てる?」

「黒服の?」

「リーダー」

短く訂正する。

「恵梨香の席に入る回数、増えてると思わない?」

理沙は一瞬、視線を落とす。

「……言われてみれば」

「仕草は?」

理沙は言葉を探す。

「気のせいかも」

彩名は頷く。

「気のせいなら、それでいい」

少し間を置く。

「でもね、店って、気のせいで崩れることがある」

その声は静かだった。

理沙は彩名を見る。

焦りも怒りもない。ただ、計算する目。

理沙は気づく。

最近、自分が恵梨香のヘルプに入る回数が増えていること。
席の流れを読むように動かされていること。

偶然ではないのかもしれない。

「……私に、見ておいてほしいってこと?」

彩名はほんの少しだけ目を細める。

「見てほしいっていうか」

一拍。

「理沙なら、気づけると思った」

沈黙。
店内の音が、遠くから聞こえる。

「何かあったら」

理沙が言う。

「すぐ言うよ」

彩名は小さく頷く。

「無理はしなくていい。ただ、覚えておいて」

それだけ言うと、彩名は腕をほどいた。
理沙は何事もなかったように歩き出す。



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