「Shangri-la」で働き始めて一か月ほど経った頃、理沙はまだ固定客を持たず、他のキャストのヘルプとして席に着くことが多かった。
ある日、開店直後の静かな店に、若社長と呼ばれる客が訪れる。
以前、海外の取引先を連れて来た席で理沙が簡単な英語を話したことを覚えていた彼は、理沙の発音を褒め、英語の歌を歌ってみないかと勧める。
示された古い洋楽の中で、理沙はマライア・キャリーの「Vanishing」に惹かれ、自宅で何度も聴きながら少しずつ覚えていく。
数日後、再び若社長が来店すると、理沙はステージに立ち、まだ静かな店内で「Vanishing」を歌う。
途中で少し声を外しながらも歌い切ると、店内には静けさと拍手が残った。
その日を境に、理沙が歌う姿は店の中で知られ始め、特に「Vanishing」は、いつしか理沙を象徴する曲になっていく。
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