あらすじ_07_01
昔のトラウマがあまりにも強烈なので、嫌悪感を持たれるのも仕方ないと理沙は思った。とはいえ、自分も予想できないアクシデントにより
やむなく機械の体になったこと、手術とリハビリの1年半を耐え、ただ一心に思い続けた人もいつの間にか自分から離れてしまっていた。
理沙は淡々と今までのことを女性観測員に語った。目の前で愛する人を殺されたことに比べれば、自分の悲しみはたいしたことはないが、
リーダー男から本心を告げられたあの日の夜、1年半の耐え忍んだ苦しい時間は何だったのかと思った。
彼の家を出て明け方の通りを歩いた時、心の中はからっぽ、放心状態で病院までの長い道のりを歩いた。それでも今はこうして立ち直っている。
理沙は女性観測員を優しく抱いた。心の傷はなかなか癒えるものではないが、いつか時間が解決してくれるものだ。
地球の重力アシスト圏内に入り、主エンジンのスタートまで20分のアナウンスが流れる。理沙と女性観測員は2人そろってコントロール室に入る。
座席につきシートベルトを締める。理沙は女性観測員と目を合わせるとお互いに笑顔になった。