あらすじ_10_03


太陽系開発事業団の出資者の一つであるその企業は、システム開発とバイオ技術で巨万の富を得ていた。技術特許は同業他社を引き離している。
茨城と米国東海岸の研究所には、サイボーグ技術開発のために惜しみなく資金を投入しており、再生医療の技術は数々の不治の病の人々救い、
理沙もその恩恵にあずかった一人であった。さらにこの企業は人間の行動範囲を広げただけでなく、その先の遠大な目標を常に見ていた。
太陽系開発に資金を投入している真の理由は、その遠大な目標のためだった。
企業トップの会長は、太陽系内を自由に活動する交易の時代の次には、太陽系外への大航海の時代がくると読んでいた。
太陽系内の時間短縮には成功しても、太陽系内とは桁違いの距離の差を時間短縮できる時代がすぐに来るとは思っていなかったが、
人間の欲望の方が、劇的な技術革新よりも先行してしまって、技術革新と人間の欲望の闘いの状態になるだろう。
会長は、上院議員を目指して活動している元「エンデヴァー」船長を前に、淡々と自分の想いを語り続けた。



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