あらすじ_12_01
孫娘との尽きる事のない会話は続き、帰宅の日はあっというまにやってきた。孫娘の家族のために買ってきた土産を渡して、
理沙は彼女を空港まで見送る。自宅に戻ると理沙は、寝室のフォトプレートから孫娘の写真を次々と呼び出してしばし昔の思い出に浸る。
10年近く前の孫娘の結婚式の写真。理沙はその日の強烈な思い出を時々思い出すことがあった。孫娘が式場で新郎のもとに歩いてゆく間、
理沙は彼女を後ろから眺め、初めて彼女と会った日からの事を回想していたのだが、そのあとの強烈なイメージはいったい何だったのか。
喜ばしい出来事になるはずだったのが、理沙自身にとっては自分の今までの生き方に疑問をぶつけるような強烈な体験になった。
フォトプレートを棚に戻し、理沙はいつものように店に行き客を待った。客は徐々にではあるが増えてきて、常連になりつつある客も何人かいる。
客からは冷やかし半分に口説かれることもあったが、理沙は一線すれすれの微妙な会話を楽しんでいた。
そんな楽しい時にも突然に蘇るあの日の光景。自分を自分の外側から見ているような感覚。その視線が今も自分に向けられているような錯覚。