あらすじ_12_02
作業プラットフォームCに係留されている輸送船の出発準備が完了した。生産開始から1年が経ち、生産能力は計画の1パーセントに満たないが、
地球へのヘリウム3と水素の最初の出荷の日がやってきた。現場の指令室、時間差40分の地球の本部ではささやかなセレモニーが行われ、
半年後の輸送船の到着を、地球の供給ステーションの作業員が待っていた。地球からの輸出は、徐々に木星からの受け入れにシフトするはずである。
理沙は、現場の仕事はすべて自分の部下に任せて、今では改良型ラムジェット機の建造と木星でのテストの準備に注力していた。
改良型ラムジェット機の技術的な課題にはメドがついていて、あとは実機の完成と木星でのテストが残るのみである。
完了後には何をしようかと、理沙自身の気持ちは遥かに先の目標に目が向いていた。とはいえ、まだ具体的な形にはなっていなかったが。
自分のプライベートな時間が増えてきて、自宅の寝室兼書斎のコレクションが徐々に増えていた。今まで関心のなかった古い音楽を聴きながら、
古書店で買った本を読む。孫娘は時々台所で新しい料理にチャレンジしている。彼女の腕前は着実に上がっていた。