あらすじ_12_18


軍の同期からの話を聞いて、理沙のこれから先の目標が具体化してきた。理沙は早速長官にプロジェクトリーダーの役を降りて軍に戻ること、
軍の新しいタスクの事について話した。次世代のリーダーについては候補者は既に何人か決まっているので、残るは問題は時期だけだった。
生産プラントがフル稼働するところを見届けてもらいたかったと長官は言ったが、もう自分が先頭に立ってやることもなく、
かえって残り続けるのは後進にとって足手まといになるだけだと理沙が言うと、長官は苦笑いした。さまざまな想いが理沙の頭の中によぎる。
まだプロジェクト自体が形のない構想段階の頃から数えると、30年近い時が経っていた。長官はその間に3人も交代している。
「エンデヴァー」での木星・土星探査では、政治の論理に翻弄されながらも冒険的なミッションで世間からヒーロー扱いされ、
またある時には膨大な金食い虫だと罵られ、原子力ラムジェット機の最初のテスト失敗では批判の嵐を全身に浴びて、
今は無風状態に近い穏やかで順調きわまりない状態。トラブルのない今のうちに身を引くのが得策だと理沙は考えていた。



あらすじ(12)表紙へ