あらすじ_15_04


まだ木星の周回軌道上を漂っているような気分。温度も音も感じることなく、体も存在しないような、意識だけで生きているような感覚。
やがて木星の姿も宇宙空間も、もやの中に溶け込んでいった。徐々に体全体が暖かいものに包まれてゆき、穏やかな気分になってくる。
触感が徐々にわかるようになってきて、深い眠りについた状態に変わってきた。時間の感覚が途切れて再び意識が戻ってくる。
一瞬で目が覚めて、外の世界を認識するようになった。体はまだ動かせない。ほのかに明るい部屋の中で横たわっていた。
まわりの世界の音がわかるようになってきて、突然に自分のことを覗き込んできた人が見えた。無意識にその人物に反応してしまう。
再び永い眠りについて、次に目覚めた時には体全体が熱いもので徐々に満たされていく感覚がした。ぼやけていた視界が一瞬で鮮明なものに変化する。
何人かの人物が覗き込んでいた。一人だけ見覚えのある女性が見えた。彼女の名前を思い出すのに苦労したが結局のところ思い出せなかった。
その女性は涙を流しているようだった。理沙というのが自分の名前だというのに気づくまでにさらに数日がかかった。



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