あらすじ_15_06
半年間の回復治療の結果、理沙は日常生活に支障ない状態になるまでに回復した。不測の事態に備えて2か月間は軍の療養所で生活することになり、
退院の日には孫娘夫婦と上司である大佐が迎えに来た。2か月間の木星衛星軌道上での漂流以前の記憶についても徐々に戻ってきて、
理沙は大佐に、回復したら元の職場に戻りたいと言った。しかし大佐は、無理をしなくていいのでしばらくの間は休養するように言っただけで、
仕事の事についてはそれ以上触れることはなく、その後は孫娘も含めて4人で当たり障りのない日常の会話が続いた。
療養所では特に課題も与えられず、終日何をして過ごしてもよいと所長から言われたが、終日身の回りをサポートするヘルパーがつき、
外出は制限されていた。孫娘は娘と一緒に週に2回ほど面会に来て、大佐も週に1回モニター越しではあるが連絡をしてくるので、
そのたびに、自分はもう心身共に回復して、はやく仕事に復帰したいと訴えたが、どちらもあいまいな返事をするばかりだった。
なんとなく不気味なものを理沙は感じていた。生活をサポートしてくれるヘルパーにも常時監視されているように思えてならなかった。