あらすじ_15_17


士官との初めての会議の際には、自身に不利な情報ばかりを見せつけられ考えが混乱していた理沙だったが、自宅の書斎で机に向かい、
まずは自身の記憶の中に残っている事故の経過と、その後木星周回軌道上を漂流した時の状況を、再び事細かに書き出すことから始めた。
次に、単に偶然が重なっただけとは思えないほどの不幸な状況の、原因として考えられることを列挙してみた。救命ボートの突然の発進も、
高速艇の爆発も、救命ボートの通信機と救難信号発信機の不具合も、すべてが重なって生じる確率は非常に低い。さらに作業プラットフォームの管制室が
救命ボートほどの大きさの物体を見失うこともあり得ない。となると、誰かが背後で故意にこれらのことが起きるように仕組んでいるのか。
フライトレコーダーと、モニターデータの記録が理沙の記憶とは異なるのであれば、いったい誰が内容を巧妙に組み上げているのか。
すべての証拠を完璧に組み上げる事ができる者がいるとすれば、システム全体の仕組みを完璧に知り尽くしていなくては不可能だった。
理沙の思考の奥底で、何かどす黒く恐ろしいものが見えてきたような気がした。その者とはいつかどこかで遭遇した記憶があった。



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