あらすじ_16_08
日々激変する世界情勢と対峙しながらも、大統領は軍の担当者から受け取る、理沙の軍法会議の状況について心の片隅では心配していた。
前回に理沙と直接会ったのは、木星資源開発プロジェクトが佳境で多忙だった頃のことで、理沙は忙しい中でも集まることは忘れていなかった。
OB会と称して、「エンデヴァー」の元乗組員は年に1回集まっていた。「エンデヴァー」乗組員は世代交代を重ねて人数は増える一方、
最初の乗組員たちは集まるメンバーの中でも一目置かれていた。年を重ねて最初の乗組員は風貌は変化していったが、理沙だけは変化がなく、
特に、当時女性観測員だった頃、理沙をライバル視していた大統領夫人は、会うたびに変わらない風貌について理沙に嫌味を言っていた。
その理沙は今、軍法会議にかけられて苦境に立たされていた。罪状と裁判の状況を聴くたびに心が痛んだが、直接に助けられないのがもどかしい。
まさか理沙が自身を優先した無責任な行動をするはずがない。頭ではわかっていても、証拠全てが理沙の行動を裏付けていた。
大統領夫人の口からも最近は理沙についての嫌味は聞かれなくなった。一日の終わりに2人は理沙の無事を祈った。