あらすじ_16_15


理沙の目の前に、もう一人の自分がいた。高速艇の中のエグゼクティブ専用の部屋で仕事の資料に目を通しているところだった。
自身は暗闇の中で浮遊しているような状態で、音もなく、寒暖の感覚すらない。記憶の再現とはこのようなものだろうかと思ったところで、
何物かが心の中に直接語り掛けてきた。今まで何度か経験した感覚。シャトル事故で死の淵に遭った時、タイタン基地で中枢システムと会話した時、
その存在とは深層意識の中で会話したことがある。一人のように見えて多数のようにも思える、意識の集合体のような存在。
再び会う事を予想していたと、その存在は理沙に語り掛けた。自分たちは急速に増殖しており、世界全体、太陽系全体を包み込むまで成長し、
目的はまもなく達成されるだろうと説明した。周りの暗闇だと思えたところが急変して、視界全体に太陽系全体が見渡せる状態になった。
意識の中での出来事とは思えないほどに太陽系の姿が下方に存在し、遠くに視線を向ければ銀河系の中心まで見通す事ができる。
見渡している全体と比べれば、人間の活動領域は非常に小さく、ちっぽけなものに見えた。それがあるべき姿だと再びその存在は説明した。



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