あらすじ_16_16


もう一人の自分が、救命ボートの中で生存のための闘いをしているのを眺めながら、理沙はその存在に語り掛けた。自分をこのような状況に陥れて
さらに自身の主張は全否定され、今までの地位を台無しにされるような仕打ちを受けるのは何事かと。もし気に入らないのであればあっさりと殺せばよい
しかし、納得のいく理由を聞き出すまでは死ぬつもりはない、最後の最後まで抵抗すると。するとその存在は理沙に対して心を開いた。
理沙の示した強い意志をその存在は恐れていた。力においては全力を出さなくとも理沙一人をひねり潰すのは簡単な事だが、
それでも手を下せないのは、理沙に手を下した後の反応を恐れていたからだった。体は殺せても心の中にある強い意志までは消すことはできない。
理沙に替わる存在が必ず登場して、自分たちに歯向かってくるかもしれない。意識の集合体であるその存在は中核の部分では非常に脆く、
そのような存在にすべてを任せ、コントロールされている事が明るみになれば、世の中は大混乱に陥る事だろう。
その存在は世の中のあるべき姿を維持するために適時調整を行っていた。その欠陥を理沙は指摘し、記憶分析により証拠が提示されようとしていた。



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