あらすじ_17_05
先日受け取ったメールは、太陽系開発事業団の長官からのものだった。退職した人間に今さら何の用だろうかと理沙は思ったが、
長官の名前を見て理沙は動揺した。理沙が事業団に在籍していた頃、「エンデヴァー」の設計初期段階で同じチームで働いたリーダー男だった。
理沙が事業団を退職する直前には、すでに幹部として複数の事業を統括する立場であったが、昨年に長官になったとのことだった。
単刀直入に、理沙に相談したいことがあるので、ワシントンの本部で会いたいとだけ書かれていて、あまりの唐突さにすぐに閉じてしまった。
しかし、記憶の奥底に残っていた人物からのメールは、事業団に在籍していた頃の思い出を一気に蘇らせるものとなってしまった。
店で仕事をしていてもなぜか長官の表情を思い出してしまう。特別な感情は既に捨て去ったと思っていたものの、妙に気になる会いたいのひと言。
2日ほどメールはそのままに放置していたが、ようやく返事を書き始めた理沙。簡潔に書いてあっさりと送信する。
部屋のディスプレイでは、今日も世の中の深刻な問題を知らせるニュースが流れていた。とはいえ、自分にはいったい何が出来るのだろう。