あらすじ_17_11


店に雇う女性はほぼ目星がついた。今日面接した女性は少々癖があるように見えたが、昔働いていた店のママをしていた親友と似たところがあり、
上手く育てれば店を任せられるようになりそうだと理沙は思った。彼女が帰るのを見送り、開店の準備を始める。
週に1、2度店に顔を出している初老の男性がやってきた。頼む酒と食事のメニューはいつも同じ。座る席も同じ場所。
他の客とは離れて仲間に入って騒ぐことはしない、静かに飲むタイプだった。理沙とは壁に飾られた天体写真の話が主な会話で、
自分の事についてはあまり語ろうとしない。理沙もあえて詮索することはしなかった。どことなく陰のあるような雰囲気で、
最近わかった事と言えば、システム制御用のソフトウェアの会社を経営しているとのこと。事業団の仕事にも多少関わりがあった。
とはいえ、理沙は自分から自身の昔の仕事の事について積極的に語ることはしない。しかし、彼から土星の輪の写真の事で訊かれたときには、
「エンデヴァー」の窓から見えた巨大な輪の事を彼に説明した。目の前で見ているかのように語る理沙に、彼は徐々に理沙の話にのめり込んでいった。



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