あらすじ_21_04
技術タスクチームたちは、次々に理沙たちの考えた案の技術的な課題について指摘してきた。プレゼンテーションの背景となるデータを
実施主任が山ほど用意していたので、指摘に対しては即座に返答することができた。技術的ハードルの低さと潤沢な太陽エネルギーの優位点に対しては
木星の太陽系内物流の中心としての優位点と、探査の次のフェーズである、太陽系外へ向かう宇宙船の出発基地としての優位点で反論する。
地球からの距離では木星は負けるが、今や太陽系内物流量の8割が地球/木星間であり、単位当たりの物流輸送コストではほぼ互角である。
議論は長々と続いたが、着地点はなかなか見えなかった。理沙と実施主任の体力も限界に近く、ほぼ終日かけた会議は終わった。
そもそも役員たちには理沙たちのプランは選択肢にはなく、わざわざ木星からやってきてご苦労さん、でもプランは既に決まっているのだよ
といった上から目線。根底には地球中心の考え方、月、火星、木星含めた太陽系内居留地はしょせん地球の存続のための手先でしかないという
昔ながらの考えが支配していた。意識改革が起きない限りは、どんなに技術が進歩しても人類は狭い世界から抜け出すことは不可能だろう。