あらすじ_21_09
理沙が到着するのを待ち構えていたかのように孫娘が庭に出てきた。木星へ行っていた期間も含めると5年ぶりの再会である。
娘はすでに12歳、理沙が仕事に復帰する直前に生まれた次女も4歳になっていて、孫娘の旦那、娘の彼氏、さらには理沙の恩師の元大佐、奥方。
リビングルームは理沙を出迎えるために飾り付けられていて、軽快な音楽でささやかなパーティーが始まる。孫娘の家族に囲まれ理沙は元大佐と踊る。
積もる話はあれこれあるのだが、仕事の話は抜きに、孫娘たちからの近況話に理沙は聞き入った。近所での暴動の物騒な話もあったが。
話を聞いている間、理沙は時々元大佐の方が気になってつい目を向けてしまう。5年間しか経っていないのだが、明らかに老けたように見える。
昔のような毅然とした軍人らしいところはすっかり消えて、孫やひ孫に囲まれて穏やかに笑っている普通の老人にしか見えない。
夕食の用意が出来るまでの間、ベランダに出て元大佐と2人だけで仕事の状況について語り合ったが、頭脳明晰なところはまだ昔と変わらないものの
体力の衰えには逆らえなかった。窓越しに見える家族たちを見つめる元大佐の瞳を、理沙は無力感を感じながら眺めていた。