あらすじ_21_10
翌日、理沙は孫娘と一緒に車に乗って外出した。事業団のテキサスの事務所に勤めていた頃、買い物に行ったショッピングモールや
サイボーグ手術直後のリハビリ期間中に入院していた病院など、今はどうなっているのかと尋ねたところ、孫娘が意味深なことを言ったので、
理沙は少々気になっていた。感染症の流行の事、不景気による痛手についてはニュース等では断片的に知っていたものの、
最近閉鎖されて廃墟となったショッピングモールと、感染症の対応で戦場と化した状態だったが、収束後は経営危機により規模縮小した病院を見て、
理沙はしばらくの間言葉か出なかった。しかし、一番の衝撃的な光景は、感染症の影響で死亡した患者が埋葬された広大な臨時墓地だった。
近隣の自治体あわせて1万人近い死者が埋葬されたその場所は、バイオハザード印の立て看板と立ち入り禁止のテープで取り囲まれていた。
事業団事務所の城下町として、宇宙船の推進システムの組み立て工場もあったのだが、衛星軌道上の自動化工場のフル稼働により
地上の組み立て工場は既に用済みに。孫娘の旦那は関連の下請け工場に勤務しているので大きな痛手を受けていた。