あらすじ_21_11

大統領は、日々耳に入ってくる国内の感染症患者数、繰り返される暴動、次々に倒産する企業のニュースに、自分の思うとおりの政策を進める事ができず、
ストレスは溜まる一方だった。表立っていら立ちを見せてはいないが、直属の部下や有識者達との意見の対立は日常となっていた。
なぜこれほど物事が思い通りに進んでくれないのか。前大統領からこの国を引き継いで以来、実施した政策、外交努力のすべてが裏目に出るばかりで
前大統領のことが恨めしく思えてならない。太陽系内に拠点を着実に発展させ、人工は増え、かつてはムダな巨大投資と言われていた木星は
核融合エネルギー資源確保のための重要拠点となり、今では瀕死の状態である地球経済を根底から支える存在となっていた。
反面、失うものは多く、核融合エネルギーの普及は旧来の石油産業を完全に駆逐し、衛星軌道上の自動化工場による生産ラインが地上の宇宙産業に
とどめを刺した。そのために発生した失業者への対策を自分が担うことについて、大統領は非常に理不尽さを感じていた。
何らかの代償を払ってもらわないと割に合わない。矛先を彼らに向け、自らを正当化し、戦争も辞さない毅然とした態度が必要だと大統領は考えた。



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