あらすじ_21_12
東京へ向かう日、空港まで孫娘は理沙を送ってくれた。元大佐も一緒だった。空港の手荷物チェックゲート手前まで2人は付き添い、
別れ際、理沙は元大佐と固く握手を交わした。何度か振り返ると元大佐はそのたびに手を振っている。ゲートに入りそのまま出発ロビーへと向かう。
東京の空には低くどんよりと雲が立ち込めていて、生命力を失っているように見えた。気のせいかと思いきや、理沙が空港から都心に向かう電車に乗り
車窓から眺めるとその詳細がわかってきた。テキサス同様に東京でもところどころで暴動が発生した痕跡があり、電車を降りて歩くと
破壊の爪痕と収集されていないゴミがところどころで悪臭を放っていた。表通りと裏通りの現実は東京に帰還した8年前と比較して劇的に悪化し、
生活感のまだ残っていた当時の下町は、無人となった廃墟と、建物が取り壊されたもの利用用途が決まらない更地がところどころに点在。
一時期理沙が住み、下町人情を肌で感じた街並みは、今は跡形もなく失われて雑草の生えた空き地と建設資材置き場になっていた。
壮絶な現実を目の当たりにしてショックを受けたが、気を取り直して理沙は店に向かった。郊外に向かうにつれて徐々に荒廃は秩序を取り戻し気持ちは高まる。