あらすじ_21_13

並びの商店街はところどころに閉店している店もあったが、理沙の店は無事だった。ドアをゆっくりと開けて店の中を見渡すと準備中の2人の店員。
理沙を見るとすぐに駆けつけてきた。店があるだけで理沙は幸せだと思った。小さな店でも世間の喧騒とは関係ないオアシスだと思えてくる。
開店時刻になり徐々に馴染みの客がやってきた。店に立ち寄ることを理沙は事前に知らせていたので、各自思い思いのプレゼントを持ってきたが、
皆が無事であることを確認できただけで、他に何もいらないと思った。その夜は理沙の帰宅祝いのパーティーが行われた。
理沙は今日は特別に客扱いだった。馴染みの客とは積もる話が多すぎてとりとめもない会話になってしまう。世間の動向と客の生活は無関係ではなく、
感染症で入院して瀕死の状態の客もいた。不景気で仕事を失い生活保護を受けている客や、暴動に巻き込まれて商売が崩壊した客もいた。
夜遅くなり、日付も変わろうとしている時刻に、初老の社長が店にやってきた。理沙は入り口に向かい彼を出迎えると手をしっかりと握りしめた。
ほんの数秒、お互いに無言だったが、理沙は彼の手を引いて一緒にカウンター席に座る。手渡された大きな花束をうっとりとして眺める。



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