あらすじ_24_12
理沙は再び表舞台に登場した。しかし先日のような大統領に対する反論とは雰囲気が異なり、理沙は会見の場で静かな口調で語り始めた。
もう一度原点に戻るべきだと述べ、今までの100年以上の歴史を振り返った。大国の軍事的対立から派生した宇宙開発だったが、
一時的に世界は熱狂し、その冒険心に心踊らされて、夢を持った次の世代がさらに遠くの世界を目指すためのビジネスモデルを作った。
21世紀半ばの技術的ブレークスルーにより距離とコストの問題は解消され、大規模入植も始まり、次に目指すべきはどこなのか。
そんな夢を膨らませ模索している今、不幸にも全地球規模で発生した感染症と経済破綻により、すべてが頓挫してしまったと考えてよいのか。
木星の人々は地球の人々の敵ではなく、協力したい気持ちを持ち、危機をともに乗り越えたいと願っている同胞だと理沙は訴えた。
求めていることはただ一つ、仕事に対しての正当な報酬が欲しいだけで、それ以上は求めず、力を貸してほしいと述べて会見を終えた。
簡潔で飾る事のない理沙の発言に、圧力で押しつぶされそうになっていた火星と月の居住地は再び盛り上がり、非暴力抵抗運動が再発した。