あらすじ_25_05
閉店時刻まで直子は店で客との会話が尽きなかった。閉店まで残っていた初老の社長と一緒に、直子は別な店に流れ話を続けた。
写真の中の姿と変わりのない直子を目の前にして、しばらくの間は初老の社長の湿っぽい話が続く。戦争で同僚でかつ恋人の女性を失った事や、
はっきりと自分の気持ちを伝えることなく終わった理沙との恋の事。理沙が最後に木星へ向かう日に店に置いていった置手紙を見せられて、
直子は、理沙が地球政府との戦争前夜に言っていたことをやはり話すべきだと思った。置手紙では3年間の契約後に地球に戻ると書いたが、
結局のところ契約を延長して木星にとどまり、初老の社長と共に過ごす生き方を選ばなかった理由は別なところにあった。
木星の人々の自主独立の意志を見届けたいという想いもあったが、本当の理由はサイボーグの体であることによる精神的ギャップだった。
彼に伝えるべきか直子は考えたが、結局のところ理沙から聞いた言葉として地球に戻り普通の生活を望んでいたことを話した。
当たり障りのない、しかし直子の作り話だった。2人の間の思い出はそのままに、いい思い出のままずっと残って欲しいと直子は願った。