あらすじ_25_10
主治医の言葉は気になるものの、いつやって来るかわからない自身の体の終わりの日まではベストを尽くして頑張ろうと直子は心に決めた。
軍を退役しても、技術アドバイザー的な仕事は続いていた。直子のもとには仕事の方から頭を下げてやって来ているような状態で、
木星の独立の意志の象徴として造られたレーザー発振基地は、本来の目的のための使用される事になり、増設の準備も始まっていた。
今でも木星にとどまっている実施主任からは、太陽系外探査案件の立ち上げを手伝って欲しいと時々声をかけられる事もあったが、
もうしばらく家にいたいという思いもあり、リモートからの支援には応じる事にした。理沙の思い出がしがらみのように残っている事も理由の一つだった。
寝ると時々、理沙が夢の中に出てくる。夢の中では理沙の部屋で2人で会話している場面が多かった。亡くなる最後の会話の場面だったが、
まるで何事もなかったかのように、会話がそのまま続いていた。持ってきたワインを2人で飲みながら戦争後の世の中について語り、
太陽系外移住に関する課題事項について議論していた。リアルすぎる内容で目が覚めても夢と現実の区別がつかないほどだった。