あらすじ_25_17
大統領の演説がきっかけとなり、地球再生プランが動き始めた。欲望のままに開発し、無計画な生産の代償として地上には廃棄物が溢れ、
持つ者と持たざる者の格差は極限に達し、戦争がなくとも確実に破局の道を歩んでいることへの反省も込め、一度リセットして地球を再生させるという
壮大な計画は、強者からも弱者からも素直に迎え入れられた。とはいえこの計画の真の目的を知る人はごく一部に限られていた。
しかも肝心の所要時間についてはあやふやにされていた。目的達成のための人類大移動のことも実施直前まで内密にされた。
移動先の準備もようやく着手されたばかりで、何十億人も居住できるスペースコロニー建設の計画は、それ自体が怪しいもので、
生き残りのためには保険としての別プランが必要だった。そのための技術は既に確立しており、必要なのは実施のための決断だけ。
直子は恐ろしく巨大な地球再生プランの実施を横から冷めた目で眺めながら、日々を自宅で過ごし、自分と関係する様々な人々と会話しながら
姉についての小説を書き続けていた。姉と同じようにある日突然に命の終わりを迎えるとしても、その日が来るまで精一杯生きようと思っていた。