あらすじ_25_22
移住船14隻が木星に到着した。50年以上前に建造された巨大宇宙船と同じものが14隻も並ぶのは壮観な眺めで、約1年かけて準備が行われ
プロキシマBへの約200年間の航海に出発することになっている。プロトタイプである巨大宇宙船は指揮艦として14隻を束ねる役となり、
直子は初代の指揮官に任命された。計画当初は75000人が15隻に分かれて生活し世代交代しながら目的地を目指す予定だったのが、
タイタン基地で実用化された人工冬眠技術の活用で、乗組員は老化から解放されることになり、直子は技術の進歩による変化を目の当たりにした。
世間から注目されることもなく、直子も見逃していたニュースがあった。地上の軍の研究所で設備一つがまるごと吹き飛ぶ爆発事故が発生し、
公式には設備の操作ミスによる事故として扱われたが、実際には真空の量子ゆらぎを測定中に、真空中の量子エネルギーが実験装置になだれこみ
核爆発レベルの災害が発生していた。最高機密の扱いとされ軍内部では緘口令が敷かれた。真空の量子エネルギーを制御できれば
核融合炉は時代遅れとなり、エネルギー資源の勢力図は劇的に変わるはずだった。とはいえ実用化までにはまだ長い時間がかかると予想された。