あらすじ_25_23
移住船の出発を翌月に控え、準備はほぼ完了していた。75000人に対する事前の1週間の人工冬眠が行われ、問題ない事が確認されたので
計画通り出発の1か月後に住民全員が人工冬眠に入り、200年間の長旅に出る事になった。直子は出発式の訓示の原稿作成で悩んでいた。
直子は、何かに思い悩んでいる時に、いつでもふと思い出すことがあった。かつての同志の元大佐が軍退役後に直子に会いに来た時のことである。
東京から新橋までの街並みを2人で歩き、有楽町の大衆酒場で食事をして、最後は高級クラブで静かに語り合ったのだが、
大佐は時々理沙が登場する夢を見ているとの事。目覚めてからしばらく余韻が残るほどのリアルな内容で、大佐は理沙がまだ生きているのではないかと
錯覚するほどだとしみじみと語っていた。最後の夜は理沙との思い出話で終わり、別れ際に元大佐と交わした握手の手のぬくもりは今でも覚えている。
女性歌手の元マネージャーも、最後のメッセージでは理沙の登場する夢について、理沙がまだ生きているとの錯覚について語っていた。
直子自身が時々見る理沙の夢も同様だった。これらの事の背後には何があるのか。ふと自分を呼ぶ声がしたのて直子は目を上げた。