あらすじ_25_24

目の前のソファーに理沙が横たわっていた。直子は叫び声をあげそうになったが、時間の経過を無視して登場した理沙は何事もなかったかのように
クローゼットからワインを持ってくるようにと直子に言った。以前、巨大宇宙船で理沙と再会した際に、直子はサプライズを仕掛ける側だったが、
今回はしてやられたと思った。ワインを持って戻ってきたとき、理沙はソファーから起き上がっていた。直子は理沙にグラスを手渡した。
かつて理沙と直子の父親は、友人であるのちの支援輸送大佐に自分の夢について語っていた。サイボーグ技術が究極に発達した際に
物理的な体は不要になり、巨大なシステム空間の中で意識だけが永遠に生き続ける日のことを。夢の実現までの過程では様々な問題が発生し、
時には人命を失う事件や、国一つが崩壊する危機もあった。しかし、諦めずに進み続けた結果、ついに人類にとって新しい世の中が始まった。
目の前にいる理沙が実体なのかシステムが生み出したイメージなのか、しかしどうでもいい事に思えた。2人はワインを飲みながら未来について語り合った。
いつか遠くない日に、自分もこの世での生を終える日が来るかもしれないが、その時にはあちらの世界に取り込まれるだけだと直子は思った。



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