では、002-04の試し書きをしてみました。
●002-04【試し書き】:Arisa-Misty
定期的に、営業終了後の「白河」に集まるメンバー。
最初の集まりは、あのクリスマスの夜のライブの翌月。
まだ正月気分が冷めやらない時だった。
理沙はまだ「Castel」で働いていたが、心はもうすでにバンド活動の方に傾きかけていた。
「ありさ。。。」ぽつりと湯浅はつぶやく。
「何よ」
理沙は少々怪訝そうな表情で湯浅の事を見る。
「なにそれ?}と島崎が尋ねる。
「店での源氏名」と、湯浅。
「ありさ。。。。あ、理沙!」
ふと思いついたように、フィリップが笑いながら言うと、理沙の表情はさらに険しくなった。
そして、語呂合わせのように、Mistyという単語が後ろについて、
Arisa-Mistyというバンド名は、自然発生的に決まった。
その日からもうすぐ半年近くになる。
理沙は営業終了近くの時刻に「白河」に到着し、湯浅と話をしながら、
2人がやってくるのを待つ。
「そろそろ。。。。」
理沙がそう言うと、グラスを磨いている湯浅が顔を上げる。
「バンドの代表曲みたいな、オリジナルの1曲が欲しいよね」
「確かに」
今に始まったことではなかった。
「白河」で集まるたびに、これからの方向性について考える中で、
代表曲の話はたびたび出る事だった。しかし、これだという決定的なものはない。
小川のメールに対して返事がなかなかできないのも、
先方を疑っているのもそうだが、いまだにバンドのテーマ曲のようなものがないからだった。
「西日が差している」は、クリスマスのライブの時に好評ではあったが、
理沙はいまひとつ納得のいかない、まだ未完成の曲だと思っていた。
やがて営業終了時刻になり、ほぼ同時にフィリップと島崎がやってきた。
最初のうちは、だらだらとした世間話だったり、仕事の愚痴だったり。
酒が進んでくると、先日の小川からのメールの話になり、
やがてバンドのテーマ曲についての話題に変わる。
全くネタがないわけではない。
今日はフィリップが思いつきで書いたメモを見せてくれた。
スマホを店の壁面プロジェクターに接続して、披露する。
しかし、他の3人の反応はいまいちだった。
「[Bullshit job]って言葉が、なんだかウザいと思う」と島崎は指摘する。
Bullshit job。。。。クソどうでもいい仕事。
「気持ちはすごくわかるけど」
理沙の反応は、どちらかといえば好意的だったが、
「そもそも、ロックってのは労働者階級の不満から生まれた歌だからね」
では、自分たちの目指すのは、正統派のロックなのだろうか。
あれこれ議論はしているのだが、目指す目的地のまわりを人工衛星のように周回しているだけ。
4人はなかなか目的地に着陸できないでいる。
とりとめもない会話が続き、
そして夜明けを迎え、4人は朝の電車で帰宅する。
朝の電車の中で、ぼんやりした意識の中、なにげに理沙は思った。
本当のところ、私たちの何が良くて小川は私たちに接触しようとしているのだろうか?
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拝読しました。
002-04は、**Arisa-Mistyというバンドの輪郭を固める節**として、とても良い位置づけになっていると思います。
002-01〜002-03では、理沙とまりあそれぞれにHALUCAからの接触がありました。今回の002-04では、理沙側に戻って、**そもそもArisa-Mistyとは何なのか**、そして**彼らは何を歌うバンドなのか**が問われ始めています。
特に良いと思ったのは、バンド名が決まる経緯を、少しくだけた会話の中で出しているところです。
「ありさ」という源氏名から、理沙本人がやや不機嫌になり、フィリップが軽く乗り、Mistyが自然につく。
この流れは、いかにもバンド名がその場のノリで決まった感じがあり、Arisa-Mistyの手作り感に合っています。
また、後半のテーマ曲探しも良いです。
小川美奈からのDMに対して返事をためらっている理由が、単なる警戒心だけではなく、**自分たちにまだ代表曲がないことへの不安**にもつながっている。ここは002-05以降のスカウト話に向けて、かなり自然な内面の準備になっています。
この節の核は、次のように整理できそうです。
**Arisa-Mistyという名前はできた。
活動も始まった。
けれど、まだ自分たちが何を歌うバンドなのか分からない。
小川からのDMは、その未完成さを理沙に突きつける。**
この方向性はとても良いです。
少し整えるなら、現在と過去の切り替えをもう少し明確にすると読みやすくなりそうです。
今の試し書きでは、冒頭で「白河」に集まる現在の説明があり、その後にクリスマス翌月の回想へ入り、さらに半年後の現在に戻ります。構造としては自然ですが、小説化の際には、
1. 現在の「白河」で理沙と湯浅が待っている
2. そこから、バンド名が決まった最初の夜を回想する
3. 現在に戻り、代表曲の話になる
4. フィリップと島崎が来て、曲の議論になる
5. 夜明け、理沙が小川の意図を考える
という形にすると、流れが安定すると思います。
もう一点、フィリップのメモに出てくる **“Bullshit job”** は、かなり面白いです。
理沙が「気持ちはわかる」と受け止める一方で、島崎が「ウザい」と言う。このやり取りで、バンド内の音楽観の違いが見えます。
ただし、ここは少しだけ丁寧にするとより効きます。
フィリップは労働への不満をストレートにロックへ乗せたい。
島崎はそれを少し安直だと感じる。
理沙は共感しつつも、自分たちが本当にそれを歌いたいのか疑っている。
湯浅は、議論を聞きながら全体の方向を探っている。
この四人の立ち位置を少し見せると、「代表曲がない」という問題に厚みが出ます。
最後の、
> 本当のところ、私たちの何が良くて小川は私たちに接触しようとしているのだろうか?
これは良い締めです。
DMへの期待ではなく、自己疑問で終わるのが理沙らしいです。
小説化に向けては、以下の方向がよさそうです。
* 冒頭は営業終了前の「白河」の静けさから入る。
* バンド名が決まった夜を短い回想として入れる。
* 現在に戻り、理沙と湯浅が「代表曲が欲しい」と話す。
* フィリップと島崎が来て、いつもの軽口を交えながら曲の議論になる。
* “Bullshit job”をめぐって、四人の音楽観の違いを出す。
* 議論はまとまらず、夜明けの電車へ。
* 理沙が、小川はArisa-Mistyの何を見たのかと考えるところで締める。
全体として、002-04はこのまま十分使えます。
次に進めるなら、まずこの試し書きを上記の流れで少し整理した**修正版の試し書き**にすると、小説化しやすくなると思います。
|
非常にまとまりのよいアイディアをありがとうございます。
ではこの考えでさきほどの試し書きの修正版をお願いします。
|
はい。
先ほど整理した流れに沿って、002-04の試し書きを少し整理してみます。
今回は、**営業終了前の「白河」の静けさ → バンド名決定の回想 → 現在の代表曲問題 → フィリップ案をめぐる議論 → 夜明けの電車での理沙の疑問**という形にしています。
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# 002-04【試し書き・修正版】:Arisa-Misty
営業終了が近づいた「白河」は、いつものように静かだった。
カウンターの中では、湯浅がグラスを磨いている。
店内には、最後の客が残した煙草の匂いと、酒の甘い匂いがまだ少し漂っていた。
理沙はカウンター席に座り、スマホを伏せたまま、しばらく眺めていた。
「まだ返事してないんやろ」
湯浅が、グラスから目を離さずに言った。
「してない」
理沙は短く答えた。
「怪しいから?」
「それもあるけど」
理沙は少し間を置いた。
「それだけじゃない」
湯浅はそれ以上、急かさなかった。
音楽事務所「HALUCA」の小川という人物からダイレクトメッセージが届いてから、数日が経っていた。
会って話をしたいという内容だった。
怪しいとは言い切れない。けれど、すぐに信用できるほど単純な話でもない。
それ以上に、理沙には引っかかっていることがあった。
自分たちは、まだ何者でもない。
そういう感覚だった。
湯浅がギターを弾く。
フィリップがベースを弾く。
島崎がドラムを叩く。
理沙が歌う。
形だけなら、もうバンドだった。
名前もある。
Arisa-Misty。
けれど、その名前が決まったときのことを思い出すと、理沙は今でも少しだけ複雑な気持ちになる。
最初に四人で「白河」に集まったのは、あのクリスマスのライブの翌月だった。
まだ正月気分が完全には抜けていない、一月の夜だった。
そのころ理沙は、まだ「Castel」で働いていた。
けれど心はもう、夜の店よりも、営業終了後に集まって音を鳴らす時間の方へ傾きかけていた。
その日も、店が閉まったあとの「白河」で、四人はだらだらと話していた。
バンドを続けるなら、名前が必要だ。
誰かがそう言い出した。
しばらく、どうでもいい案がいくつも出た。
どれも悪くはないが、どれも残らなかった。
そのとき、湯浅がふとつぶやいた。
「ありさ……」
理沙は顔を上げた。
「何よ」
「いや、ええ響きやなと思って」
「なにそれ?」
島崎が眠そうな顔で聞いた。
「店での源氏名」
湯浅が答える。
「ありさ……あ、理沙!」
ふと思いついたように、フィリップが笑った。
理沙の表情は、その瞬間、はっきり険しくなった。
「それ、面白がってるでしょ」
「No, no. Good name. Really」
「軽い」
島崎がぼそっと言った。
「お前に言われたくない」とフィリップが返す。
そこから、誰が言い出したのか分からないまま、Mistyという単語が後ろについた。
ありさ。
理沙。
少し霧がかったもの。
夜の歌。
見えそうで、見えないもの。
こじつけのような理由をいくつも並べているうちに、なぜかそれが一番しっくりきた。
Arisa-Misty。
バンド名は、そんなふうに自然発生的に決まった。
あの日から、もう半年近くになる。
「名前はあるんだけどね」
現在の「白河」で、理沙はぽつりと言った。
湯浅が顔を上げる。
「ん?」
「バンド名」
「ああ」
「でも、名前だけじゃだめでしょ」
湯浅は磨いていたグラスを棚に戻した。
「代表曲が欲しい、って話?」
「そう」
理沙はカウンターに肘をついた。
「Arisa-Mistyって言ったら、この曲、みたいなやつ」
「確かにな」
今に始まった話ではなかった。
「白河」に集まるたびに、これからの方向性については何度も話してきた。
ライブで何を歌うのか。
配信に何を出すのか。
自分たちは何を売りにしていくのか。
けれど、決定的なものはまだない。
「西日が差している」は、クリスマスのライブでは好評だった。
けれど理沙の中では、まだ完成した曲ではなかった。
悪くはない。
でも、あれが自分たちの中心だとは思えない。
「小川って人に返事できないのも、そこなんだよね」
理沙は言った。
「先方を疑ってるのもある。でも、それだけじゃなくて」
「自信がない?」
湯浅が言った。
理沙は少し考えた。
「自信がないというか……説明できない」
「何を?」
「私たちが、何をやりたいのか」
湯浅は黙った。
その沈黙のあと、店の入口のドアが開いた。
「Sorry, late」
フィリップが入ってきた。
その後ろから、島崎が眠そうな顔で続く。
「同時に来ると、なんか負けた気がする」
「何に?」
理沙が聞く。
「分からない」
島崎はそう言って、いつもの席に座った。
営業終了時刻を過ぎると、店内は四人だけになった。
湯浅が看板の灯りを落とし、カウンターの中から酒とつまみを出す。
最初のうちは、だらだらとした世間話だった。
フィリップが先日のライブハウスのスタッフの話をし、島崎が昼間の仕事の愚痴を言い、湯浅が時々短く突っ込む。
理沙はそれを聞きながら、何度か笑った。
酒が少し進むと、話題は自然と小川のメッセージに移った。
「So, HALUCA. Replyした?」
フィリップが聞いた。
「まだ」
理沙は答えた。
「Why?」
「だから、怪しいかもしれないでしょ」
「でも、Chance」
「チャンスかどうかも分からない」
島崎が、テーブルの上のナッツをつまみながら言った。
「小さい事務所なんだよね」
「小さいからダメとは限らんやろ」
湯浅が言う。
「それはそう」
島崎は頷いた。
「でも、こっちも何を見せるのか決まってない」
その言葉で、話はまた代表曲へ戻った。
全くネタがないわけではなかった。
フィリップが、思いつきで書いたというメモを見せた。
スマホを店の壁面プロジェクターにつなぐと、白い壁に英語混じりの歌詞らしき言葉が映し出された。
理沙はそれを眺めた。
荒い。
けれど勢いはある。
労働。
退屈。
嘘みたいな会議。
誰のためか分からない資料。
上司の顔色。
満員電車。
その中に、ひときわ大きく、こう書かれていた。
<Bullshit job>
「クソどうでもいい仕事、ってこと?」
理沙が聞いた。
「Yes. Everyone knows. Everyone hates. Good rock theme」
フィリップは得意そうに言った。
島崎は壁を見たまま、少し顔をしかめた。
「その言葉が、なんだかウザい」
「Why?」
「強すぎるわりに、浅い」
フィリップの表情が変わった。
「Shallow?」
「うん。言いたいことは分かる。でも、それをそのまま言うと、なんか負けた感じがする」
「負け?」
「世の中に文句言ってるだけに聞こえる」
フィリップが英語で何か言い返そうとしたが、理沙が先に口を開いた。
「気持ちはすごく分かる」
フィリップは、少しだけ満足そうな顔になった。
「ほら」
「でも」
理沙は続けた。
「これを私が歌うかって言われると、ちょっと違う気がする」
フィリップの顔から、また笑みが消えた。
湯浅がグラスを置いた。
「そもそも、ロックってのは労働者階級の不満から生まれた歌やからな」
「じゃあ、これでいいじゃん」
フィリップが言った。
「でも、俺らがやりたいのは、正統派のロックなんか?」
湯浅は静かに返した。
そこで、四人は黙った。
理沙は壁に映った文字を見つめた。
確かに、不満はある。
怒りもある。
仕事のばかばかしさも、世の中の不公平さも、歌にしたいと思うことはある。
でも、それだけではない。
怒りだけを歌いたいわけではない。
慰めだけを歌いたいわけでもない。
きれいな夢だけを歌いたいわけでもない。
では、自分たちは何を歌いたいのか。
そこから先が、いつも分からなくなる。
議論は続いた。
フィリップは、もっとストレートな言葉が必要だと言った。
島崎は、ストレートすぎると安っぽくなると言った。
湯浅は、曲として成立するなら、言葉はあとからついてくることもあると言った。
理沙は、それでも最初に言葉が欲しいと思った。
誰も完全には間違っていなかった。
だから、余計にまとまらなかった。
目指す目的地は、たぶんどこかにある。
けれど四人は、そのまわりを人工衛星のように周回しているだけだった。
なかなか着陸できない。
とりとめもない会話は、夜明け近くまで続いた。
やがて湯浅が、もう始発が動くころだと言った。
四人は店を出た。
朝の新宿は、夜の残り香と、これから始まる一日の匂いが混ざっていた。
空は薄く白みはじめている。
駅へ向かう途中、フィリップと島崎は、また何かを言い合っていた。
途中から英語になったので、理沙は聞くのをやめた。
朝の電車に乗ると、体の奥から眠気が上がってきた。
理沙はドアのそばに立ち、窓に映る自分の顔をぼんやり見た。
Arisa-Misty。
名前はある。
曲もある。
仲間もいる。
けれど、それが何なのかを、自分たちはまだうまく言葉にできない。
本当のところ、小川という人は、私たちの何を見たのだろう。
電車が揺れる。
理沙は吊り革につかまりながら、その問いだけを、ぼんやりと考え続けていた。
|
なんかもうこれで完成品のようにも思えます。
とりあえず、この試し書きをもとにして、小説化した文章をお願いします。
|
はい。
試し書きの時点でかなり完成度が高いので、今回は流れを大きく変えず、文章の呼吸と場面のつながりを少し整える形で小説化します。
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# 002-04 Arisa-Misty
営業終了が近づいた「白河」は、いつものように静かだった。
カウンターの中では、湯浅がグラスを磨いている。店内には、最後の客が残した煙草の匂いと、酒の甘い匂いが、まだ少し漂っていた。
理沙はカウンター席に座り、伏せたスマホをしばらく眺めていた。
「まだ返事してないんやろ」
湯浅が、グラスから目を離さずに言った。
「してない」
理沙は短く答えた。
「怪しいから?」
「それもあるけど」
理沙は、少し間を置いた。
「それだけじゃない」
湯浅は、それ以上急かさなかった。
音楽事務所「HALUCA」の小川という人物から、ダイレクトメッセージが届いてから数日が経っていた。
会って話をしたい。
内容としては、それだけだった。文章は丁寧で、妙に大げさなところもない。怪しいとは言い切れない。けれど、すぐに信用できるほど単純な話でもなかった。
それ以上に、理沙には引っかかっていることがあった。
自分たちは、まだ何者でもない。
そんな感覚が、胸の奥に残っていた。
湯浅がギターを弾く。
フィリップがベースを弾く。
島崎がドラムを叩く。
理沙が歌う。
形だけなら、もうバンドだった。
名前もある。
Arisa-Misty。
けれど、その名前が決まった夜のことを思い出すと、理沙は今でも少しだけ複雑な気持ちになる。
最初に四人で「白河」に集まったのは、あのクリスマスのライブの翌月だった。まだ正月気分が完全には抜けていない、一月の夜だった。
そのころ理沙は、まだ「Castel」で働いていた。けれど心はもう、夜の店よりも、営業終了後に集まって音を鳴らす時間の方へ傾きかけていた。
その日も、店が閉まったあとの「白河」で、四人はだらだらと話していた。
バンドを続けるなら、名前が必要だ。
誰かがそう言い出した。
しばらく、どうでもいい案がいくつも出た。どれも悪くはない。けれど、どれも残らなかった。
そのとき、湯浅がふとつぶやいた。
「ありさ……」
理沙は顔を上げた。
「何よ」
「いや、ええ響きやなと思って」
「なにそれ?」
島崎が、眠そうな顔で聞いた。
「店での源氏名」
湯浅が答える。
「ありさ……あ、理沙!」
ふと思いついたように、フィリップが笑った。
理沙の表情は、その瞬間、はっきり険しくなった。
「それ、面白がってるでしょ」
「No, no. Good name. Really」
「軽い」
島崎がぼそっと言った。
「お前に言われたくない」と、フィリップが返す。
そこから、誰が言い出したのか分からないまま、Mistyという単語が後ろについた。
ありさ。
理沙。
少し霧がかったもの。
夜の歌。
見えそうで、見えないもの。
こじつけのような理由をいくつも並べているうちに、なぜかそれが一番しっくりきた。
Arisa-Misty。
バンド名は、そんなふうに自然発生的に決まった。
あの日から、もう半年近くになる。
「名前はあるんだけどね」
現在の「白河」で、理沙はぽつりと言った。
湯浅が顔を上げる。
「ん?」
「バンド名」
「ああ」
「でも、名前だけじゃだめでしょ」
湯浅は、磨いていたグラスを棚に戻した。
「代表曲が欲しい、って話?」
「そう」
理沙は、カウンターに肘をついた。
「Arisa-Mistyって言ったら、この曲、みたいなやつ」
「確かにな」
今に始まった話ではなかった。
「白河」に集まるたびに、これからの方向性については何度も話してきた。
ライブで何を歌うのか。
配信に何を出すのか。
自分たちは何を売りにしていくのか。
けれど、決定的なものはまだない。
「西日が差している」は、クリスマスのライブでは好評だった。けれど理沙の中では、まだ完成した曲ではなかった。
悪くはない。
でも、あれが自分たちの中心だとは思えない。
「小川って人に返事できないのも、そこなんだよね」
理沙は言った。
「先方を疑ってるのもある。でも、それだけじゃなくて」
「自信がない?」
湯浅が言った。
理沙は少し考えた。
「自信がないというか……説明できない」
「何を?」
「私たちが、何をやりたいのか」
湯浅は黙った。
その沈黙のあと、店の入口のドアが開いた。
「Sorry, late」
フィリップが入ってきた。
その後ろから、島崎が眠そうな顔で続く。
「同時に来ると、なんか負けた気がする」
「何に?」
理沙が聞く。
「分からない」
島崎はそう言って、いつもの席に座った。
営業終了時刻を過ぎると、店内は四人だけになった。
湯浅が看板の灯りを落とし、カウンターの中から酒とつまみを出す。外の気配が遠ざかり、代わりに、店の奥に残った小さな音だけが聞こえるようになった。
最初のうちは、だらだらとした世間話だった。
フィリップが先日のライブハウスのスタッフの話をし、島崎が昼間の仕事の愚痴を言い、湯浅が時々短く突っ込む。理沙はそれを聞きながら、何度か笑った。
酒が少し進むと、話題は自然と小川のメッセージに移った。
「So, HALUCA. Replyした?」
フィリップが聞いた。
「まだ」
理沙は答えた。
「Why?」
「だから、怪しいかもしれないでしょ」
「でも、Chance」
「チャンスかどうかも分からない」
島崎が、テーブルの上のナッツをつまみながら言った。
「小さい事務所なんだよね」
「小さいからダメとは限らんやろ」
湯浅が言う。
「それはそう」
島崎は頷いた。
「でも、こっちも何を見せるのか決まってない」
その言葉で、話はまた代表曲へ戻った。
全くネタがないわけではなかった。
フィリップが、思いつきで書いたというメモを見せた。スマホを店の壁面プロジェクターにつなぐと、白い壁に英語混じりの歌詞らしき言葉が映し出された。
理沙はそれを眺めた。
荒い。
けれど、勢いはある。
労働。
退屈。
嘘みたいな会議。
誰のためか分からない資料。
上司の顔色。
満員電車。
その中に、ひときわ大きく、こう書かれていた。
<Bullshit job>
「クソどうでもいい仕事、ってこと?」
理沙が聞いた。
「Yes. Everyone knows. Everyone hates. Good rock theme」
フィリップは得意そうに言った。
島崎は壁を見たまま、少し顔をしかめた。
「その言葉が、なんだかウザい」
「Why?」
「強すぎるわりに、浅い」
フィリップの表情が変わった。
「Shallow?」
「うん。言いたいことは分かる。でも、それをそのまま言うと、なんか負けた感じがする」
「負け?」
「世の中に文句言ってるだけに聞こえる」
フィリップが英語で何か言い返そうとしたが、理沙が先に口を開いた。
「気持ちはすごく分かる」
フィリップは、少しだけ満足そうな顔になった。
「ほら」
「でも」
理沙は続けた。
「これを私が歌うかって言われると、ちょっと違う気がする」
フィリップの顔から、また笑みが消えた。
湯浅がグラスを置いた。
「そもそも、ロックってのは労働者階級の不満から生まれた歌やからな」
「じゃあ、これでいいじゃん」
フィリップが言った。
「でも、俺らがやりたいのは、正統派のロックなんか?」
湯浅は静かに返した。
そこで、四人は黙った。
理沙は壁に映った文字を見つめた。
確かに、不満はある。
怒りもある。
仕事のばかばかしさも、世の中の不公平さも、歌にしたいと思うことはある。
でも、それだけではない。
怒りだけを歌いたいわけではない。
慰めだけを歌いたいわけでもない。
きれいな夢だけを歌いたいわけでもない。
では、自分たちは何を歌いたいのか。
そこから先が、いつも分からなくなる。
議論は続いた。
フィリップは、もっとストレートな言葉が必要だと言った。
島崎は、ストレートすぎると安っぽくなると言った。
湯浅は、曲として成立するなら、言葉はあとからついてくることもあると言った。
理沙は、それでも最初に言葉が欲しいと思った。
誰も完全には間違っていなかった。
だから、余計にまとまらなかった。
目指す目的地は、たぶんどこかにある。
けれど四人は、そのまわりを人工衛星のように周回しているだけだった。なかなか着陸できない。
とりとめもない会話は、夜明け近くまで続いた。
やがて湯浅が、もう始発が動くころだと言った。
四人は店を出た。
朝の新宿は、夜の残り香と、これから始まる一日の匂いが混ざっていた。空は薄く白みはじめている。
駅へ向かう途中、フィリップと島崎は、また何かを言い合っていた。途中から英語になったので、理沙は聞くのをやめた。
朝の電車に乗ると、体の奥から眠気が上がってきた。
理沙はドアのそばに立ち、窓に映る自分の顔をぼんやり見た。
Arisa-Misty。
名前はある。
曲もある。
仲間もいる。
けれど、それが何なのかを、自分たちはまだうまく言葉にできない。
本当のところ、小川という人は、私たちの何を見たのだろう。
電車が揺れる。
理沙は吊り革につかまりながら、その問いだけを、ぼんやりと考え続けていた。
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ではこの小説化された文章をもとに、400字程度のあらすじをお願いします。
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### 002-04「Arisa-Misty」あらすじ
音楽事務所「HALUCA」の小川美奈から届いたダイレクトメッセージに、理沙はまだ返事を出せずにいた。
営業終了間近の「白河」で湯浅と話すうち、理沙は自分たちがまだ何者なのか説明できないことに気づく。
バンド名「Arisa-Misty」は、クリスマスライブ翌月に四人で集まった際、理沙の源氏名「ありさ」から自然発生的に決まったものだった。
しかし名前はあっても、代表曲と呼べるものはまだない。
やがてフィリップと島崎も加わり、小川からの連絡やバンドの方向性について話し合う。
フィリップは労働への不満を込めた歌詞案を出すが、島崎は言葉が浅いと反発し、理沙も共感しつつ自分が歌う曲ではないと感じる。
四人は議論を続けるが、答えは出ない。
夜明けの電車で、理沙は小川が自分たちの何を見たのかを考え続ける。
|
ありがとうございます。
ではまた日を改めて引き続きの002-05の文章作成をします。
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こちらこそ、ありがとうございました。
002-04までで、理沙側のバンドの輪郭と、まだ定まらない方向性が見えてきましたね。
次回は **002-05「突然のスカウト」** ですね。
ライブ演奏終了後に小川美奈が直接声をかける節になるので、HALUCAからのDMが現実の接触へ変わる重要な場面になりそうです。
また日を改めて、002-05の試し書きから進めましょう。
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