025_個室オーディション(1)

●作者のコメント

●ChatGPTのコメント
では、002-08の試し書きをしてみました。

●002-08【試し書き】:個室オーディション(1)

幹線道路から少し外れた、静かなオフィス街に「HALUCA」の事務所はあった。
約束の時刻の5分前に理沙たちは到着した。
小川からの事前の指示通りに、到着したことをショートメッセージで伝える。

それから1分もしないうちに、1人の女性が理沙がここまで来るのと同じ方向から歩いてきた。
背の高さは理沙と同じくらい。Tシャツにジーンズのズボン。
一見して、なんとなく地味でぱっとしない女性。
彼女は、理沙たちから数メートル離れたところで立ち止まり、スマホを操作している。
ふと、理沙は彼女と視線が合った。
なにげに理沙は無言で、ビルの4階の「HALUCA」の看板を指さすと、
彼女は笑顔になり、小さく頷く。

ちょうどその時、小川が目の前のビルの玄関から出てきた。
先日会った時とは違い、Tシャツにスカートのラフな格好だった。
理沙たち4人は気合の入った声で挨拶。
そして、理沙のすぐそばに立っている女性は、なんとなくけだるい声で挨拶。

「あなたが、片岡さん?」
小川からの呼びかけに、はい。。。と、その女性は頷く。
小川とは初対面のようで、小川は彼女に名刺を渡すと少しの間会話していた。
そんな2人の会話をしているところを眺めながら、ふと、フィリップの方に目を向けると、
彼もまた理沙のことを見ていた。そしてなにげに小さく親指を立てる。
何を意図しているのかよくわからなかったが、理沙は無言で小さく頷く。

ひととおり会話が終わると、ビルの玄関から入りエレベーターに乗る。
エレベーターの中は狭く、6人乗ると息が詰まりそうだった。
4階に到着すると、目の前に「HALUCA」の事務所のドアが。
さっそく中に入ると、広くはないが清潔で空調のほどよく効いたオフィスだった。
テーブル席がいくつかあり、向かって左側には応接コーナー。
テーブル席奥には、理沙がいつも見慣れているシステムエンジニア風の男女が3人。
そして、テーブル席の窓際には、いかにも社長とわかる風格の男。
彼はノートパソコンの画面を見ていたが、理沙たちが入ってきたことに気づくと、
視線を上げて笑顔になり、立ち上がった。

「ようこそ「HALUCA」へ。皆さんを歓迎します」

いや、まだ契約したわけではないのに、と理沙は思ったが、
彼に手招きされて、応接コーナーへと向かう。

「私が柴原です。暑い中、わざわざ来ていただいてありがとうございます」

柴原から名刺を受け取る。縦長の名刺を受け取るのは「Castel」以来久しぶりだった。
テーブルを挟んで、理沙たち、そして片岡の5人は座り、
正面に柴原、少し遅れて小川がやってきてテーブルの上にアイスコーヒーのグラスを並べると、
彼女は柴原の隣に座った。

まずは柴原と小川が簡単に自己紹介をする。
そして、理沙を先頭に「Arisa-Misty」の4人が自己紹介、その次に、片岡。
理沙は、今日が初対面の彼女がどんな歌手なのだろうかと非常に気になっていた。

「片岡まりあです」

小さく頭を下げる彼女。さきほど初めて会った時よりも若干表情が明るくなっていた。
少し間をおいて、実は。。。と前置きしてから、

「ロシア人と日本人のハーフなんです」

その一言に、理沙の彼女に対する興味が一気に高まる。

「なので、エレーナってミドルネームもあります」

ワオ。。。と小さな声がすぐ横で聞こえた。
理沙はすかさず、隣に座っているフィリップのことを見る。満面の笑顔だった。
しかし、理沙が鋭い視線を向けると、血の気が引くように笑顔が消える。
その様子を見て、目の前に座っている小川が鼻で笑う。

そのあとはしばらくの間、柴原の過去の職歴中心の話が続く。
事前に柴原のプロフィールは調べてあったので、目新しいものは特になかった。
唯一、新たな情報としては、学生時代にバンド活動をしていた事だった。
音楽事務所を立ち上げるきっかけはそれだったのかと、ふと理沙は思った。

柴原の雑談は30分近く続いたが、
さて。。。と前置きをして、ようやく彼は本題に入った。

「こんな畑違いの私が、なぜこんな事業を始めたのか、と思ったかもしれませんが」
拝読しました。
002-08は、ここまで別々に進んできた**理沙側の線**と**まりあ側の線**が、ついに同じ場所で交差する節ですね。かなり重要な回です。

今回の試し書きは、流れとしてとても自然です。
特に良いのは、HALUCAの事務所前で、理沙とまりあがまだ互いの正体を知らないまま、先に視線だけを交わすところです。

理沙が無言でビルの「HALUCA」の看板を指さし、まりあが笑顔で小さく頷く。
この場面はとても良いです。まだ言葉を交わしていないのに、「この人も同じ場所に呼ばれたのだ」と分かる。二人の最初の接点として、静かで印象的です。

また、フィリップが片岡まりあを見て、理沙に親指を立てるところも良いです。
彼の「好みのタイプを見つけた」感じがすぐ出ますし、それを理沙が鋭い視線で制する後半の流れにもつながっています。

この節の核は、次のように整理できそうです。

**理沙たちArisa-Mistyは、HALUCAの事務所を訪れる。
そこで理沙は、同じく呼ばれていた片岡まりあと初めて出会う。
まりあは地味で控えめに見えるが、自己紹介でロシア人と日本人のハーフであること、エレーナというミドルネームを持つことを明かし、理沙の興味を引く。
HALUCAの柴原社長は、理沙たちとまりあを迎え入れ、自己紹介と雑談を経て、ようやく自分がなぜ音楽事業を始めたのかという本題に入る。**

ここで「片岡・エレーナ・まりあ」というフルネームそのものはまだ出さず、今回初めて「エレーナ」というミドルネームだけが明かされる形ですね。
前節では伏せていたので、ここで出すのはとても自然です。

少し整えるなら、以下の点です。

まず、冒頭のHALUCA事務所の場所は、もう少しだけ空気を出すとよさそうです。
「幹線道路から少し外れた静かなオフィス街」という設定は良いので、土曜昼の人通りの少なさ、ビルの古すぎず新しすぎない感じ、4階の小さな看板などを入れると、HALUCAの“まだ小さい事務所”感が出ます。

次に、まりあの第一印象は少し繊細に扱うと良いと思います。
「地味でぱっとしない女性」という理沙の印象は分かりますが、少し柔らかくして、

> 派手さはなかった。
> どちらかといえば、街の中に溶け込んでしまいそうな人だった。

くらいにすると、まりあの「普段は控えめ、歌うと変わる」設定に合います。

また、HALUCAのオフィス描写も良いです。
システムエンジニア風の男女がいる点は、音楽事務所なのにIT企業のようでもあり、未来の小規模音楽事務所らしい雰囲気があります。ここは活かしたいです。

柴原の登場も、少しだけ間を持たせると印象が強くなりそうです。

* 窓際の席にいる
* ノートパソコンを見ている
* 理沙たちが入るとすぐに立ち上がる
* 威圧感はあるが、歓迎の笑顔を見せる
* 「ようこそHALUCAへ」

この流れで、社長らしい存在感が出ます。

自己紹介場面では、まりあの自己紹介をこの節の小さな山にするとよさそうです。

理沙から見ると、まりあは最初「少しけだるく、控えめな女性」。
ところが、

> 「ロシア人と日本人のハーフなんです」
> 「なので、エレーナってミドルネームもあります」

で、一気に印象が変わる。
ここで理沙は「この人は、見た目よりずっと奥行きがある」と感じる方向が自然です。

フィリップの反応は、コミカルで良いです。
ただし、まりあ本人に失礼にならない程度に、理沙の視線で抑えるとちょうどよいと思います。

最後の締めも良いです。

> 「こんな畑違いの私が、なぜこんな事業を始めたのか、と思ったかもしれませんが」

ここで切ると、002-09「個室オーディション(2)」への引きになります。
002-08は「出会いと場の設定」、002-09で「柴原の目的説明」という役割分担ができます。

修正版にするなら、流れはこう整理するとよさそうです。

1. 土曜午後、理沙たちがHALUCAのある静かなオフィス街へ到着する。
2. 小川へ到着連絡を送る。
3. 同じ方向から、片岡まりあがやって来る。理沙と視線が合い、HALUCAの看板を指さす。
4. 小川が現れ、理沙たちとまりあを迎える。
5. 狭いエレベーターで4階へ上がる。
6. HALUCAの小さく清潔なオフィスに入る。柴原が立ち上がって歓迎する。
7. 応接コーナーで名刺交換と自己紹介。
8. まりあが「ロシア人と日本人のハーフ」「エレーナというミドルネーム」を明かす。理沙の興味が高まる。フィリップは反応し、理沙に制される。
9. 柴原の職歴や学生時代のバンド話を含む雑談。
10. 柴原が本題へ入り、「なぜこの事業を始めたのか」と切り出す。

この方向で修正版にすると、小説化時にかなり安定すると思います。
まりあの印象をもう少し丁寧に、というのには賛成です。
では、提案頂いた整理項目にもとづいて、試し書きを修正するとどんな感じになりますか?
はい。
まりあの第一印象を少し丁寧にして、**「地味でぱっとしない」ではなく、街に溶け込むような控えめさ/まだ正体が見えない感じ**として描く方向にします。

また、002-08は「出会い」と「場の設定」が中心なので、柴原の本題は最後に入る直前で止め、002-09へつなぐ形にしています。

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# 002-08【試し書き・修正版】:個室オーディション(1)

土曜日の午後、空はよく晴れていた。

幹線道路から少し外れた、静かなオフィス街に「HALUCA」の事務所はあった。
平日なら会社員の出入りがあるのだろうが、土曜日の昼過ぎの通りは、人影が少なかった。

古すぎるわけでも、新しすぎるわけでもない中規模のビル。
その四階の窓際に、小さく「HALUCA」と書かれた看板が見えた。

約束の時刻の五分前に、理沙たちはビルの前に到着した。

理沙。
湯浅。
フィリップ。
島崎。

四人とも、普段のライブ後のだらけた雰囲気とは違って、どこかぎこちなかった。

小川からの事前の指示通り、理沙は到着したことをショートメッセージで伝えた。

送信してから、一分もしないうちだった。

理沙たちが歩いてきたのと同じ方向から、一人の女性がこちらへ向かってきた。

背の高さは、理沙と同じくらい。
白っぽいTシャツに、ジーンズ。
髪は短く、黒。
手にはスマホを持っている。

派手さはなかった。
どちらかといえば、街の中に溶け込んでしまいそうな人だった。

けれど、なぜか理沙の目には残った。

表情が暗いというわけではない。
ただ、少し疲れているようにも見える。
それでいて、目だけは妙に静かだった。

その女性は、理沙たちから数メートル離れたところで立ち止まり、スマホを操作し始めた。
おそらく、誰かに到着を知らせているのだろう。

ふと、理沙と視線が合った。

一瞬、互いに何も言わなかった。

理沙はなんとなく、ビルの四階を指さした。
「HALUCA」の看板がある場所だ。

女性はそちらを見上げたあと、理沙の方を見て、小さく笑った。
そして、軽く頷いた。

同じ場所に呼ばれた人なのだと、その仕草だけで分かった。

ちょうどそのとき、目の前のビルの玄関から小川美奈が出てきた。

先日ライブハウスで会ったときの黒いビジネススーツではなく、今日はTシャツにスカートというラフな格好だった。
それでも、落ち着いた雰囲気は変わらない。

「お待たせしました」

小川が言った。

理沙たち四人は、妙に気合の入った声で挨拶した。

「本日はよろしくお願いします」

四人の声が、少しそろいすぎた。

小川は一瞬だけ目を丸くし、それから笑った。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

一方、理沙の近くに立っていた女性は、少し遅れて、けだるそうというより、まだ声が目覚めきっていないような調子で頭を下げた。

「よろしくお願いします」

小川はその女性の方を向いた。

「あなたが、片岡さん?」

「はい」

女性は小さく頷いた。

小川とは初対面のようだった。
小川は名刺を差し出し、短く自己紹介をする。
片岡と呼ばれた女性は、両手でそれを受け取り、少し緊張したように頭を下げた。

理沙は、その様子を横から見ていた。

自分たちと同じく、彼女も今日ここへ呼ばれた。
けれど、バンドではない。
一人で来ている。

どんな歌を歌う人なのだろう。

ふと隣を見ると、フィリップが理沙の方を見ていた。
そして、なぜか小さく親指を立てた。

意味は、だいたい想像できた。

理沙は無言で、ほんの少し目を細めた。

フィリップの親指は、すぐに下がった。

小川と片岡の短い挨拶が終わると、一同はビルの玄関に入った。

エレベーターは狭かった。

六人で乗ると、息が詰まりそうになる。
誰も大きな声では話さなかった。

フィリップが何か言いたそうにしていたが、理沙が視線だけで制した。
島崎は階数表示をじっと見ている。
湯浅は黙って腕を組んでいた。

片岡は、エレベーターの隅で、スマホを持った手を前にそろえていた。
疲れているようにも、緊張しているようにも見えた。

四階に着くと、扉が開いた。

目の前に、「HALUCA」と書かれた事務所のドアがあった。

小川が鍵を開け、中へ案内する。

広くはなかった。
けれど、清潔なオフィスだった。

空調はほどよく効いている。
白い壁。
いくつかのテーブル席。
向かって左側には、応接コーナー。
奥には、理沙が昼の職場で見慣れているような、システムエンジニア風の男女が三人、ノートパソコンに向かっていた。

音楽事務所というより、小さなIT企業のようにも見える。

理沙は少しだけ意外に思った。

そして、窓際のテーブルに、一人の男が座っていた。

白いシャツに、グレーのジャケット。
黒いズボン。
年齢は五十代くらい。
姿勢がよく、座っているだけで、そこが彼の席だと分かるような雰囲気があった。

男はノートパソコンの画面を見ていたが、理沙たちが入ってきたことに気づくと、すぐに視線を上げた。

そして、笑顔になって立ち上がった。

「ようこそ、HALUCAへ。皆さんを歓迎します」

まだ契約したわけではないのに。

理沙は内心でそう思った。

けれど、男の言い方には、押しつけがましさはなかった。
当然のように相手を迎え入れる、経営者らしい声だった。

「こちらへどうぞ」

男に手招きされ、理沙たちは応接コーナーへ向かった。

「私が柴原です。暑い中、わざわざ来ていただいてありがとうございます」

柴原は、一人ずつ名刺を差し出した。

理沙は両手で受け取った。

縦長の名刺だった。
そういう名刺を受け取るのは、「Castel」以来久しぶりだった。

テーブルを挟んで、理沙たち四人と片岡が並んで座る。
正面に柴原。
少し遅れて、小川がアイスコーヒーのグラスを運んできた。

グラスがテーブルに並ぶと、小川は柴原の隣に座った。

まずは、柴原が簡単に自己紹介をした。
続いて小川が、今日の流れを説明する。

そのあと、理沙たちの自己紹介になった。

「大嶋理沙です。Arisa-Mistyではヴォーカルを担当しています」

理沙が最初に名乗る。

続いて、湯浅がギター担当として挨拶し、フィリップがベース、島崎がドラムと、それぞれ簡単に自己紹介した。

最後に、片岡の番になった。

理沙は、自然と彼女の方を見た。

今日、事務所の前で初めて会った女性。
控えめで、少し疲れているようにも見える女性。
けれど、目だけが静かに残る人。

その人が、どんな歌を歌うのか。

理沙は、自分でも思った以上に気になっていた。

片岡は、小さく頭を下げた。

「片岡まりあです」

声は大きくなかった。
けれど、思ったよりもはっきりしていた。

さっきビルの前で会ったときより、表情が少し明るくなっているように見えた。

少し間を置いて、片岡は続けた。

「実は、ロシア人と日本人のハーフなんです」

その一言で、理沙の中の印象が少し変わった。

目の前の控えめな女性の輪郭の奥に、今まで見えていなかったものがある気がした。

「なので、エレーナってミドルネームもあります」

隣で、誰かが小さく息をのんだ。

「Wow……」

フィリップだった。

理沙は、すぐに横を見た。

フィリップは、分かりやすいほど満面の笑顔になっていた。

理沙が鋭い視線を向けると、その笑顔は一瞬で消えた。

目の前に座っていた小川が、鼻で小さく笑った。

片岡まりあは、そのやり取りに気づいているのかいないのか、少し困ったように笑っていた。

そのあと、しばらくの間、柴原の話が続いた。

金融会社に勤めていたこと。
その後、外資系の投資会社で働いたこと。
いくつかの企業投資案件に関わったこと。

理沙たちは、事前に柴原のプロフィールを調べていた。
だから、大きく目新しい話はなかった。

ただ、一つだけ、初めて聞く話があった。

「実は、学生時代に少しだけバンドをやっていましてね」

柴原は、少し照れたように笑った。

「当時は本気で音楽で食べていけると思っていました。若かったんでしょう」

その言葉に、湯浅が少しだけ反応した。
フィリップも身を乗り出しかけたが、理沙に見られて姿勢を戻した。

音楽事務所を立ち上げたきっかけは、それだったのかもしれない。

理沙は、ふと思った。

柴原の雑談は、三十分近く続いた。

話し方は理路整然としている。
無駄に偉そうではない。
けれど、相手の反応を見ながら、場の主導権は確実に握っている。

小川とは違うやり方だった。

けれど、似ているところもあった。

この人も、こちらを見ている。

理沙はそう感じた。

やがて柴原は、アイスコーヒーのグラスをテーブルに置いた。

「さて」

その一言で、場の空気が少し変わった。

「こんな畑違いの私が、なぜこんな事業を始めたのか、と思われたかもしれませんが」

柴原は、理沙たちとまりあをゆっくり見渡した。

「今日はまず、その話からさせてください」
はい、次につながる自然な雰囲気が良く出ています。
ではこの試し書きをもとにして、小説化された文章をお願いします。
はい。
試し書きの「初対面の静かな緊張感」と「HALUCAという場の空気」を活かしながら、小説本文として整えます。

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# 002-08 個室オーディション(1)

土曜日の午後、空はよく晴れていた。

幹線道路から少し外れた、静かなオフィス街に「HALUCA」の事務所はあった。平日なら会社員の出入りがあるのだろうが、土曜日の昼過ぎの通りは、人影が少なかった。

古すぎるわけでも、新しすぎるわけでもない中規模のビル。
その四階の窓際に、小さく「HALUCA」と書かれた看板が見えた。

約束の時刻の五分前に、理沙たちはビルの前に到着した。

理沙。
湯浅。
フィリップ。
島崎。

四人とも、普段のライブ後のだらけた雰囲気とは違って、どこかぎこちなかった。

小川からの事前の指示通り、理沙は到着したことをショートメッセージで伝えた。

送信してから、一分もしないうちだった。

理沙たちが歩いてきたのと同じ方向から、一人の女性がこちらへ向かってきた。

背の高さは、理沙と同じくらいだった。
白っぽいTシャツに、ジーンズ。
髪は短く、黒い。
手にはスマホを持っている。

派手さはなかった。
どちらかといえば、街の中に溶け込んでしまいそうな人だった。

けれど、なぜか理沙の目には残った。

表情が暗いというわけではない。
ただ、少し疲れているようにも見える。
それでいて、目だけは妙に静かだった。

その女性は、理沙たちから数メートル離れたところで立ち止まり、スマホを操作し始めた。おそらく、誰かに到着を知らせているのだろう。

ふと、理沙と視線が合った。

一瞬、互いに何も言わなかった。

理沙はなんとなく、ビルの四階を指さした。
「HALUCA」の看板がある場所だ。

女性はそちらを見上げたあと、理沙の方を見て、小さく笑った。
そして、軽く頷いた。

同じ場所に呼ばれた人なのだと、その仕草だけで分かった。

ちょうどそのとき、目の前のビルの玄関から小川美奈が出てきた。

先日ライブハウスで会ったときの黒いビジネススーツではなく、今日はTシャツにスカートというラフな格好だった。それでも、落ち着いた雰囲気は変わらない。

「お待たせしました」

小川が言った。

理沙たち四人は、妙に気合の入った声で挨拶した。

「本日はよろしくお願いします」

四人の声が、少しそろいすぎた。

小川は一瞬だけ目を丸くし、それから笑った。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

一方、理沙の近くに立っていた女性は、少し遅れて頭を下げた。けだるそうというより、まだ声が目覚めきっていないような調子だった。

「よろしくお願いします」

小川は、その女性の方を向いた。

「あなたが、片岡さん?」

「はい」

女性は小さく頷いた。

小川とは初対面のようだった。小川は名刺を差し出し、短く自己紹介をする。片岡と呼ばれた女性は、両手でそれを受け取り、少し緊張したように頭を下げた。

理沙は、その様子を横から見ていた。

自分たちと同じく、彼女も今日ここへ呼ばれた。

けれど、バンドではない。
一人で来ている。

どんな歌を歌う人なのだろう。

ふと隣を見ると、フィリップが理沙の方を見ていた。
そして、なぜか小さく親指を立てた。

意味は、だいたい想像できた。

理沙は無言で、ほんの少し目を細めた。

フィリップの親指は、すぐに下がった。

小川と片岡の短い挨拶が終わると、一同はビルの玄関に入った。

エレベーターは狭かった。

六人で乗ると、息が詰まりそうになる。
誰も大きな声では話さなかった。

フィリップが何か言いたそうにしていたが、理沙が視線だけで制した。島崎は階数表示をじっと見ている。湯浅は黙って腕を組んでいた。

片岡は、エレベーターの隅で、スマホを持った手を前にそろえていた。疲れているようにも、緊張しているようにも見えた。

四階に着くと、扉が開いた。

目の前に、「HALUCA」と書かれた事務所のドアがあった。

小川が鍵を開け、中へ案内する。

広くはなかった。
けれど、清潔なオフィスだった。

空調はほどよく効いている。
白い壁。
いくつかのテーブル席。
向かって左側には、応接コーナー。
奥には、理沙が昼の職場で見慣れているような、システムエンジニア風の男女が三人、ノートパソコンに向かっていた。

音楽事務所というより、小さなIT企業のようにも見える。

理沙は、少しだけ意外に思った。

そして、窓際のテーブルに、一人の男が座っていた。

白いシャツに、グレーのジャケット。
黒いズボン。
年齢は五十代くらい。
姿勢がよく、座っているだけで、そこが彼の席だと分かるような雰囲気があった。

男はノートパソコンの画面を見ていたが、理沙たちが入ってきたことに気づくと、すぐに視線を上げた。

そして、笑顔になって立ち上がった。

「ようこそ、HALUCAへ。皆さんを歓迎します」

まだ契約したわけではないのに。

理沙は内心でそう思った。

けれど、男の言い方には、押しつけがましさはなかった。
当然のように相手を迎え入れる、経営者らしい声だった。

「こちらへどうぞ」

男に手招きされ、理沙たちは応接コーナーへ向かった。

「私が柴原です。暑い中、わざわざ来ていただいてありがとうございます」

柴原は、一人ずつ名刺を差し出した。

理沙は両手で受け取った。

縦長の名刺だった。
そういう名刺を受け取るのは、「Castel」以来久しぶりだった。

テーブルを挟んで、理沙たち四人と片岡が並んで座る。
正面に柴原。
少し遅れて、小川がアイスコーヒーのグラスを運んできた。

グラスがテーブルに並ぶと、小川は柴原の隣に座った。

まずは、柴原が簡単に自己紹介をした。
続いて小川が、今日の流れを説明する。

そのあと、理沙たちの自己紹介になった。

「大嶋理沙です。Arisa-Mistyではヴォーカルを担当しています」

理沙が最初に名乗る。

続いて、湯浅がギター担当として挨拶し、フィリップがベース、島崎がドラムと、それぞれ簡単に自己紹介した。

最後に、片岡の番になった。

理沙は、自然と彼女の方を見た。

今日、事務所の前で初めて会った女性。
控えめで、少し疲れているようにも見える女性。
けれど、目だけが静かに残る人。

その人が、どんな歌を歌うのか。

理沙は、自分でも思った以上に気になっていた。

片岡は、小さく頭を下げた。

「片岡まりあです」

声は大きくなかった。
けれど、思ったよりもはっきりしていた。

さっきビルの前で会ったときより、表情が少し明るくなっているように見えた。

少し間を置いて、片岡は続けた。

「実は、ロシア人と日本人のハーフなんです」

その一言で、理沙の中の印象が少し変わった。

目の前の控えめな女性の輪郭の奥に、今まで見えていなかったものがある気がした。

「なので、エレーナってミドルネームもあります」

隣で、誰かが小さく息をのんだ。

「Wow……」

フィリップだった。

理沙は、すぐに横を見た。

フィリップは、分かりやすいほど満面の笑顔になっていた。

理沙が鋭い視線を向けると、その笑顔は一瞬で消えた。

目の前に座っていた小川が、鼻で小さく笑った。

片岡まりあは、そのやり取りに気づいているのかいないのか、少し困ったように笑っていた。

そのあと、しばらくの間、柴原の話が続いた。

金融会社に勤めていたこと。
その後、外資系の投資会社で働いたこと。
いくつかの企業投資案件に関わったこと。

理沙たちは、事前に柴原のプロフィールを調べていた。
だから、大きく目新しい話はなかった。

ただ、一つだけ、初めて聞く話があった。

「実は、学生時代に少しだけバンドをやっていましてね」

柴原は、少し照れたように笑った。

「当時は本気で音楽で食べていけると思っていました。若かったんでしょう」

その言葉に、湯浅が少しだけ反応した。

フィリップも身を乗り出しかけたが、理沙に見られて姿勢を戻した。

音楽事務所を立ち上げたきっかけは、それだったのかもしれない。

理沙は、ふと思った。

柴原の雑談は、三十分近く続いた。

話し方は理路整然としている。
無駄に偉そうではない。
けれど、相手の反応を見ながら、場の主導権は確実に握っている。

小川とは違うやり方だった。

けれど、似ているところもあった。

この人も、こちらを見ている。

理沙はそう感じた。

やがて柴原は、アイスコーヒーのグラスをテーブルに置いた。

「さて」

その一言で、場の空気が少し変わった。

「こんな畑違いの私が、なぜこんな事業を始めたのか、と思われたかもしれませんが」

柴原は、理沙たちとまりあをゆっくり見渡した。

「今日はまず、その話からさせてください」
ありがとうございます。
では、400字程度でこの文章のあらすじの作成をお願いします。
### 002-08「個室オーディション(1)」あらすじ

土曜日の午後、理沙たちArisa-Mistyの四人は、HALUCAの事務所を訪れる。
ビルの前で到着を知らせると、同じく呼ばれていた片岡まりあと出会う。
まりあは控えめで街に溶け込むような雰囲気を持ちながら、静かな目が印象に残る女性だった。
小川美奈に案内され、六人は狭いエレベーターで四階の事務所へ向かう。
HALUCAのオフィスは小さく清潔で、音楽事務所というよりIT企業のような雰囲気だった。そこで理沙たちは社長の柴原勝と対面する。
応接コーナーで自己紹介が進み、まりあはロシア人と日本人のハーフで、エレーナというミドルネームを持つことを明かす。
その一言で、理沙はまりあへの興味を深める。
柴原は自身の経歴や学生時代のバンド経験を語った後、なぜ音楽事業を始めたのかという本題に入ろうとする。
ありがとうございます。
ではまた日を改めて、引き続きの002-09の文章作成をいたします。
こちらこそ、ありがとうございました。
002-08で、理沙とまりあがついに同じ場に入り、HALUCA・柴原・小川を含めた舞台が整いましたね。

次回は **002-09「個室オーディション(2)」** ですね。
柴原が「なぜ音楽事業を始めたのか」「理沙たちとまりあに何を見ているのか」を語る節になりそうです。ここでHALUCA側の狙いが少しずつ見えてくる重要な場面になると思います。

また日を改めて、002-09の試し書きから進めましょう。



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