では、008-06の以下小説化された本文の、あらすじ作成(400字程度)をお願いします。
●008-06:中国の宇宙船の土星への出発(2)
中国科学院の責任者の説明は、そのまま淡々と続いていた。
木星へ先に到着したのは我が国であり、最初の有人探査を成功させ、ヘリウム3の分布を調査し、大気サンプルを採取し、実用化を加速させる――
抑揚の少ない声で語られるその内容は、どこか既に決まった未来をなぞっているようにも聞こえる。
やがて映像は切り替わり、2070年代に木星で稼働を開始する予定とされるプラントの想像図が流れ始めた。
巨大な構造物が雲海の上に浮かび、規則正しく稼働する様子がCGで描かれている。
続いて、科学院の研究所で組み立てが進むヘリウム3精製プラントのプロトタイプが映し出され、責任者はそれを誇らしげに指し示しながら説明を続けた。
現実と未来図とが混ざり合ったその映像は、どこまでが事実でどこからが構想なのか、境界が曖昧なまま流れていく。
やがてニュース映像は終わり、会議室には再び静けさが戻った。
テーブルを囲む6人は、誰も口を開こうとはしなかった。
各自がディスプレイの余韻を引きずるように、ぼんやりとした視線を向けている。
その沈黙を破ったのはデイビッドだった。
「なんだ」と彼は小さく言い、肩をすくめるように苦笑した。
「みんな、本気で信じてるの?」
軽い調子の言葉だったが、誰もそれに応じることはなかった。
否定も肯定もせず、ただ時間だけがゆっくりと流れていく。
それから一時間後、地上の管制室からの通信が入る。
画面にはFSDD長官の姿が映し出された。
よほどの事態かと身構える者もいたが、長官の口調は予想に反して落ち着いていた。
「今のところは、12時のニュース以外に目立った追加情報はない」と淡々と述べる。
「エンデヴァー」は木星へ、「長征」は土星へ――現時点では、それ以上でもそれ以下でもないという整理だった。
わずかに視線を落とし、言葉を選ぶような間を置いてから、
「どちらかといえば、気になるのは政治家の動きだ。ムダに騒がないで欲しいと願っている」と続ける。
最後に、周囲の雑音に惑わされず各自の任務に集中してほしいとだけ付け加え、通信はあっさりと終了した。
残された六人は、互いに顔を見合わせることもなく、それぞれの持ち場へと戻っていった。
その日の作業を終え、短いシフト引き継ぎの会議を済ませると、乗組員たちは居住区画で思い思いに時間を過ごす。
廊下ではデイビッドが器具を使って筋力トレーニングをしており、金属がわずかにきしむ音が規則的に響いている。
向かいの部屋ではメリッサが音楽を流しながら読書をしているらしく、扉越しにかすかな旋律が漏れてくる。
理沙は自室の入口に寄りかかるように立ち、その2人の様子をしばらく眺めていた。
特別な意味はない。ただ、日常の一コマとして目に入ってくるだけだった。
やがて時刻は24時を迎え、廊下の照明が自動的に落ちる。
光量を抑えた間接照明に切り替わり、船内はゆるやかな夜の空気に包まれた。
デイビッドはそのまま廊下で毛布にくるまり、身体を横たえる。
メリッサも自室のベッドに入り、同じように毛布を引き寄せて眠りについたようだった。
理沙は部屋に戻り、最後の作業に取りかかる。
枕元の小さなスポットライトを点け、端末を開く。
上司への報告書の作成。
昨日のファイルを呼び出し、複製して日付だけを今日のものに書き換える。
形式は一覧表で、理沙を除いた11人の乗組員の名前が縦に並んでいる。
一番上にはメリッサの名前。
その右側のコメント欄には、昨日と同じく「特に目立った問題はなし」と入力されている。
理沙は一瞬だけその文字列を見つめ、それから視線を下に移した。
廊下の向こうから、デイビッドのいびきがかすかに聞こえてくる。
規則的で、どこか安心感のある音だった。
理沙は今日一日の出来事を思い返しながら、他のメンバーのコメント欄に必要最低限の加筆をしていく。
業務的な記述。感情は入れない。事実だけを淡々と積み上げていく。
そのとき、不意にいびきの音が途切れた。
静寂が訪れる。
ほんの一瞬の空白。
その直後、廊下を挟んで向かいのメリッサの部屋から、低いうめき声が漏れてきた。
何かを懇願しているようにも、あるいは押し殺した叫びのようにも聞こえる。
言葉としては判別できない。ただ、苦しげな音だけが断片的に伝わってくる。
理沙の手が、メリッサの名前の欄で止まった。
耳を澄ませる。
呼吸を浅くし、音の輪郭を拾おうとする。
しかし、はっきりとした意味はつかめない。
断続的だった声は、やがて途切れ、そのまま何事もなかったかのように静かになった。
再び、船内には規則的な機械の低い駆動音だけが残る。
理沙はしばらくそのまま動かずにいたが、やがて視線を端末に戻した。
メリッサのコメント欄には、何も加えなかった。
そのまま、報告書を上司へ送信する。
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