では、008-14の以下小説化された本文の、あらすじ作成(400字程度)をお願いします。
●008-14:分断(2)
大統領は、いつものように威勢のいい言葉で演説を始めた。
画面の向こうで語られる内容は、聞き慣れた調子で、強い断定と分かりやすい対立構図に満ちている。
しかしその一方で、画面下に流れるテロップは、別の意味を持っていた。
<大統領、FSDDへの拠出金停止を示唆>
そうきたか……と、理沙の隣にいつの間にか座っていたエドガーが小さく呟く。
理沙は何も言わず、そのまま画面を見続ける。
大統領は続ける。
米国はFSDDに対して資金面で最大の貢献をしているにもかかわらず、巨大化した組織は硬直化し、意思決定は遅く、責任の所在も曖昧になっている。
そんな組織に納税者の税金を投じるのは愚かである――その論調は、単純で、しかし分かりやすい。
「全くもって、ごもっともでございます」
エドガーは、わずかに肩をすくめるようにしてそう言うと、それ以上画面を見ようともせず、トレイの上の食事に視線を落とし、黙々と口に運び始めた。
その態度が、どこまで本心なのかは分からない。
会見が終わるのとほぼ同時に、マルチ画面の一角が切り替わる。
前回と同じように、FSDD長官からのメッセージが届いた。まるでタイミングを計っていたかのようだった。
大統領は「エンデヴァー」に直接命令を下すことはできない。
しかし、半ば国際機関であるFSDDへの拠出金の停止を命じることはできる。
その事実が、状況の重さを静かに裏付けていた。
さらに、地球との通信には30分のタイムラグがある。この遅延が、事態のもどかしさをいっそう際立たせる。
<私たちも、このミッションの意義について説明し、反論はしている>
長官の言葉は簡潔だったが、その裏にある苦しさは伝わってくる。
だが、それでもなお、大統領の意向を覆すことがどれほど難しいか――その部分はあえて明言されていない。
<国家の威信と、生き残りのための資源開発の、どちらが大事なのか>
その一文が最後だった。メッセージはそこで途切れる。
理沙はわずかに息を吐いた。
その瞬間、レイラが部屋の奥にいる船長に向かって言った。
「ちょっと、集まりませんか?」
短い言葉だったが、迷いはなかった。
12人が会議室に顔を揃えることは、めったにない。
普段はそれぞれが持ち場で作業をし、必要に応じて分散したまま連携を取る。
それがこの船の通常の形だった。しかしこのときばかりは、全員が同じ場所に集まる。
レイラは立ったまま、ゆっくりと全員の顔を見渡した。
一人ひとりの表情を確認するように視線を巡らせ、最後に正面にいる船長をしっかりと見つめる。
「趣旨については、あえて説明するまでもないと思います」
静かな口調だった。
「長官からのミッション変更指示に対して、現場からの意見をとりまとめて、返信したいと思います」
船長は短く頷いた。
「そうですね」
それ以上の補足はなかった。
発言は、船長の隣に座るエドガーから始まった。
順番を決めたわけでもないが、自然とその流れになっていく。
淡々と事実と意見を述べる者もいれば、やや踏み込んだ強い言葉を選ぶ者もいる。
それぞれの立場や考え方の違いが、少しずつ浮き上がってくる。
ブレントの番になると、彼は事前にまとめていたデータをもとに説明を始めた。
「長征」よりも先に土星へ到達するためのプラン。
その存在を初めて知る者も多く、何人かは驚いた表情を隠さなかった。
「既にそんな動きがあるのか……」
小さな声がどこかで漏れる。
しかし、船長とレイラは特に反応を示さない。
驚く様子もなく、ただ説明に耳を傾けている。
その理由は明白だった。プライベートな通信を除き、FSDDとのすべてのやり取りは、船長とレイラの権限で閲覧可能になっている。
情報の量と質に差がある以上、反応にも差が出るのは当然だった。
意見が一巡しかけたところで、アンジェラが口を開いた。
普段は必要最低限の言葉しか発しない彼女の発言に、自然と視線が集まる。
「米国と中国の対立に、あえて巻き込まれる必要はありません」
口調は静かだったが、内容は明確だった。
「拠出金を止めるというなら、どうぞ止めてください」
その言葉は、突き放すようでもあり、ある種の覚悟を含んでいるようにも聞こえた。
誰もすぐには応じなかった。
短い沈黙が落ちる。互いの表情を探るような、曖昧な時間。
理沙の番になる。
彼女はすぐには口を開かず、一度だけ視線を落とし、言葉を選ぶように間を置いた。
「まず、今回のミッションの重要性については、改めて確認しておく必要があります」
ゆっくりと顔を上げる。
「その前提に立てば、大統領の発言は一貫性を欠いていて、筋が通っているとは言えません」
そこまでは、比較的はっきりと言い切る。
「ただし……」
わずかに間を置く。
「“長征”と“エンデヴァー”の動向は、全世界が注目しています。
たとえパフォーマンスの要素があったとしても、人々の期待に応えるという意味では、私たちにも一定の役割があると考えます」
言い終えたあと、理沙は周囲を見渡さない。ただ、まっすぐ前を見ている。
隣に座るアンジェラの表情がわずかに硬くなっているのが、視界の端で分かったが、それ以上は意識しない。
船長とレイラは、理沙の方をしっかりと見つめていた。
何も言わずに、ただ聞いている。
やがて、10人分の意見が一通り出揃う。
最後に、レイラが自分の考えを述べた。
その内容は、驚くほど理沙の意見に近いものだった。感情を排した、現実的な整理。どこに軸を置くか、その判断だけが淡々と示される。
「全員の意見が終わりましたね」
レイラは再び全員を見渡す。
「とはいえ、ここで決をとることは考えていません」
一拍置く。
「代表として、船長の意見を聞きたいです」
誰も動かない。
その言葉が空間に留まる。
やがて、全員の視線が自然と船長に集まる。
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