では、008-22の以下小説化された本文の、あらすじ作成(400字程度)をお願いします。
●008-22:タイタン2番乗り(2)
タイタンの大気は濃く、着陸船は上層大気へ進入した直後から、ゆっくりと減速していった。
機首を大きく持ち上げた姿勢のまま、着陸予定地点へ向けて長い降下を続ける。
翼の下面では圧縮された大気が高熱となり、耐熱材の周囲には淡い炎がまとわりついていたが、
木星や土星で経験した大気ブレーキと比べれば、その負荷ははるかに穏やかなものだった。
降下シーケンスはほぼ自動化されており、3人にできることは多くない。
メリッサ、デイビッド、エドガーは、それぞれシートに身体を預けながら、目の前のディスプレイに表示されるデータを静かに見守っていた。
船体を包む振動も一定で、機内には低い駆動音だけが響いている。
メリッサは航路表示を見つめながら、ふと小さく眉を寄せた。
数値上は異常なし。システムも正常判定を維持している。だが、どこか感覚的に引っかかるものがある。
彼女は表示をもう一度見直し、ほんの一瞬だけ視線を止めた。
「ねぇ、ブルーノ」
通信回線越しに、「エンデヴァー」のコクピットにいるブルーノへ声をかける。
「何か、おかしくない?」
壁面ディスプレイの前で同じデータを見ていたブルーノも、数秒遅れて異変に気づいた。
表示上ではわずかな誤差にしか見えない。
しかし、そのまま進めば、予測進路は予定着陸地点を外れ、メタンの海へ向かっていた。
少し間を置いてから、ブルーノが答える。
「確かに」
システムは異常を異常として認識していない。だからこそ厄介だった。
警告も出ないまま、静かに誤った判断を続けている。
「デイビッド、操縦系統」
メリッサは短く指示を出す。
デイビッドが頷き、格納されていた操縦桿を手元へ引き出した。残された時間は多くない。
「マニュアルに切り替え」
パネル中央の赤いスイッチを、メリッサはためらいなく回す。
自動制御表示が消え、手動制御モードへ移行したことを示すランプが点灯する。
彼女は操縦桿をわずかに右へ傾け、側面スラスターを短く噴射した。
船体がゆっくりと反応し、ずれていた航路表示が少しずつ本来のラインへ戻り始める。
「エンデヴァー」側では、ブルーノが即座に原因調査へ取りかかっていた。
理沙は自室のディスプレイ越しに、そのやり取りを無言で見守っている。
降下は続く。厚いオレンジ色の雲海が、すぐ眼下まで迫っていた。
大気圧の上昇に伴い、方向舵にも十分な効果が出始める。船体の挙動は安定していた。
その時、小さなアラート音が鳴った。
「おそらく」
ブルーノが調査結果を伝える。
「大気データモデルを誤って判断している」
またか――と、メリッサは心の中で呟いた。
入念に準備し、シミュレーションを繰り返しても、最後にはこうした想定外が入り込んでくる。
宇宙開発とは結局そういうものなのだと、半ば諦めにも似た感覚があった。
「了解」
メリッサは進行方向を維持したまま、短く答える。その声に焦りはない。
その後は、再び淡々と作業が進んだ。
予定着陸地点の近くまで降下すると、着陸船は再び大きく機首を持ち上げ、最終減速に入る。
ほぼ垂直に近い姿勢となり、メインエンジンでホバリングを開始。ゆっくりとタイタンの大地へ降下してゆく。
噴射によって地表のメタン氷が吹き飛ばされ、白い粒子となって周囲へ舞い上がる。
「エンジン停止」
メリッサの声とほぼ同時に、着陸船はわずかな衝撃とともに接地した。
機内に静けさが戻る。
メリッサは深く息を吐いた。
通信越しのブルーノもまた、小さく肩の力を抜いている。そして理沙も、自室で胸をなで下ろしていた。
メリッサの、とっさの判断。
少なくとも今この瞬間は、それが着陸船を救ったように見えていた。
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