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− 連続小説掲示板 −

ここでは「理沙の物語」の詳細ストーリーを書いています。
なお、この掲示板は閲覧専用です。

最近更新が滞っていてすみません。。。。。(^_^;


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マスターの横顔(その8) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:50 No.62  

「そうか・・・・。」
みんなが帰ったあと、理沙と幸子ママは2人だけで24時間開いている近所の居酒屋に行った。
明日は定休日、今日の幸子はいつになくリラックスしているように見える。
「れいなと張り合うのはやめなって言われたよ。そんなつもりはなかったんだけど、でも、どうしてもあの娘を前にするとね・・・・。」
幸子はもう日本酒を2合開けていた。いつもの飲みのペースよりはるかに早いので、3本目を頼もうとした彼女を理沙はたしなめた。
「いいじゃない、明日はゆっくり休もうよ。」
あまりに彼女がハイペースなので、理沙のほうが今日はかなりセーブしていた。「だからって、かなり飲むの早いよ。」

予想通り、幸子はそのあと何合か飲んだが、そのあと一気に眠りについてしまった。
幸子を抱えながら、ようやくのことでタクシーに乗せて、彼女のマンションまで送ってゆく。
ごめんね〜、理沙・・・・・とうなされたようにタクシーの中で幸子はうめいている。
そのあとようやくのことで部屋までつれてゆき、服を脱がせて楽にすると理沙は幸子をベッドに寝かせた。
「ごめんね・・・・・巻き込んじゃって。」
「いいよ、あたしの何倍も苦労しているんだから、今日はゆっくり休んでよ。」
「うれしぃ〜〜〜〜。」
幸子起き上がって理沙に抱きついた。
酒くさい息に気持ち悪くなったが、やがて耳元で幸子のすすり泣く声が聞こえてきたので、理沙は突き放したりせずにしばらくそのままでいた。



マスターの横顔(その7) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:48 No.61  

「規則違反なのも問題だが、だからといって規則に縛られすぎるのもどうかと思うがね。」
マスターは自分のデスクに座り、幸子もマスターを正面から見つめる。
「でも、店の中をかきまわして、彼女たちが他の店に流れるのも時間の問題よ。」
「いや、やる気があるのならば、彼女たちだってきっと自分なりに考えるよ。野放しにしておくつもりはない。」
「マスター、無責任すぎないですが?他人の客に手を出してもそれでいいと・・・・・。」
「そういう意味じゃなくて・・・・。」
マスターは煙草に火をつけた。そしていらだっている幸子の気持ちをなだめるように、
「なにかとれいなに張り合おうとしているように見えるけど、それでは何もよくならない。ただ火に油を注ぐようなもんだ。」
イスに深くよりかかり、大きく煙を吐き出す。
「4年も人生の先輩なんだ。れいなをもっと利用する方法を考えてみるのは?彼女を幸子の右腕にするように盛り上げていくんだ。どう?」
幸子はソファーの肘掛に腰掛けた。
そしてふぅ・・・と小さくため息をついた。
「あたし・・・・・やっぱり焦りすぎているのかな?」
腕を組んで、マスターはゆっくりとうなずき、
「まあ、そんなもんだと思っていた。でも俺も昔はそうやって焦ってばかりいたよ。いつでも手探りだったし。」
幸子は立ち上がった。
「ごめんね、マスター。れいなときちんと話してみるよ。」



マスターの横顔(その6) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:47 No.60  

ミーティングの10分前にマスターは店にやってきた。
れいなはそれよりも30分も前に店に来ている。一緒ではないようだ。
「昨日は突然のことで動揺もあると思いますが、いつものようにお客さんに接してください。」
マスターは短く話を済ませると、ミーティングは終わり全員が店の入り口近くの待合室に待機した。いつものように開店する。
「れいなさ〜ん。ありささ〜ん。」
珍しいこともあるものだ、開店早々理沙には指名客がやってきた。

テーブルに向かうところで、れいなは言った。
「今日のマスター、なんだかそわそわしてないかしら?」
「何で?」
しかしその間、理沙はマスターと幸子ママが事務所に入ってゆくのを横目でチェックしていた。
「う〜〜ん、なんとなくあの2人は何かあるなと思っていたから。」
「そうかな?・・・・まあ、経営者同士の会話とかなら。」
れいなは何も言わずに、理沙の肩に軽く手を置くと、自分の指名客のテーブルに向かっていった。
理沙にちょっとだけ見せた不気味な笑顔が妙に気になる。



マスターの横顔(その5) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:47 No.59  

「ねえ。」
理沙の家まではあとわずか、高速を降りて夕方の住宅街をぬけてゆく。
「幸子ママのこと、まだ好き?」
マスターはすぐには反応しなかったが、やがてう〜んと小さく唸った。
「まあ、自分でこんなに気に入った女の娘はいなかったなぁ。そばにいるだけでなんだか気持ちが落ち着いてくるからね。」
「それだけ・・・・?」マンションの前で車を停めたマスターの横顔をしっかりと見つめて、
「ママはマスターのこと、待っているみたいよ。」
そして2、3秒間の沈黙の時間。しかし、理沙はハハハと笑って。
「どうもありがとう、マスター・・・・・・じゃ、また明日。」理沙は車を降りてマスターに軽く手を振った。
苦笑いをしているマスターの表情がちょっと気になる。

次の日、幸子ママから通常出勤の連絡を受けたので、理沙はいつものようにみんなより30分早く出勤した。
ママはカウンターでグラスの手入れをしている。理沙はカウンター席に座ってママに向かい合った。
「マスターに言っておいたよ、ママがマスターのこと好きだって。」
あのね・・・・・。ママはマドラーで理沙の頭を軽くたたいた。



マスターの横顔(その4) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:43 No.58  

高速に乗って、理沙の家まで車をとばす。
「ねえ、マスター。」
中心街の渋滞を巧みにすりぬけて、10分かからずに東京湾の大きな橋までやってきた。う〜〜〜んと彼は返事した。
「いつかは店もどこかに移転するんでしょ?再開発があるとかなんとか。それっていつ頃?」
「まあ、あと2、3年ってところなのかなぁ・・・・オーナーも正直言ってあんまり店を続けることには関心なさそうだしね。」
「じゃぁ、やっぱりそのうちには独立してお店持つわけ?」
マスターは、今の店ではたたき上げの人間だった。バーテンから始まって苦労して自分の実績をのばしてきた。
同期のバーテンはどんどん消えていったが、彼だけが苦労を乗り越えて、強い責任感を買われてオーナーから店を任されることになった。
「夢だけどね・・・・。」再び煙草をくわえて、彼はふ〜んと笑った。

昔々ある日のこと、プライベートで仲間ととあるクラブで飲みに行ったとき、マスターはテーブルについてくれたある女性に心をひかれた。
彼女は客の扱い方も、話も、決してうまいとはいえなかったが、その包み込むようなやさしさに、彼の心の中のセンサーは反応した。
<電話番号教えてくれないかな?>
名刺を渡して、その後何回か彼は彼女に電話した。
光る才能をのばせば、きっと素敵な女性になれる。そしてマスターは1ヶ月かかってようやくその女性を店に引き込み、教育した。

それが幸子ママだった。



マスターの横顔(その3) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:42 No.57  

30分ほど待って、マスターが店にやってきた。
「遅かったじゃない。」と幸子ママ。きつい口調だった。
「いやいや・・・・交通規制で店の近くまで車停められなくてね。」
3人は店を閉めて、大急ぎで野次馬の集まり始めた通りを抜けていった。
車のところまでようやく到着。警官たちが大勢集まっている中を抜け、高速の近くまでやってきたところで、幸子ママは言った。
「理沙を先に送ってあげてよ。」
しかし、理沙はすぐに口をはさんだ「ママの家の方が近いんだし・・・・・ママを先に送っていってあげてよ。」
う〜ん、困ったな・・・・とマスターは少し考えていたが、やがて車を市街地の通りに向けて、ママの家の方向に向けた。
「そんな、気を使ってくれなくてもいいのに。」ママの口調には少々不満の様子が。
10分弱で車は幸子ママのマンションに到着した。
「明日からどうするかは、また連絡するからね。」

マスターは車を高速の方に向けた。
安心感から、ふぅ〜〜〜っと理沙は大きく背伸びしてシートにのけぞった。
「大変だったね。あの辺はキケンだからいつかは移転したほうがいいって、いつもオーナーには言っているんだけどね。」
「じゃ、ママと一緒に独立して店を出したらいいじゃない・・・?」
マスターは煙草に火をつけると、軽くふかした。「バカ・・・・何いってんの?」



マスターの横顔(その2) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:36 No.56  

次の日、まだみんなが出勤してくる前。
突然店の近くで大きな爆発音がした。
理沙と幸子ママだけが出勤していた。あわててカウンター下に2人はもぐりこんだ。
「何なのよ?」爆発音は続けて2回。しばらく待ってから2人はカウンター下を出た。
「みんなの居場所を確認しないと。」幸子ママはさっそく壁にある壁面モニターをマルチモードに切り替え、女の娘たちの位置情報と、全員の安否を確認した。
理沙は通りに面した窓から下の通りをながめた。通りには物が散乱している様子はない。別なブロックでの事故だろうか?
「みんな帰らせたわ。今日は臨時休業ね・・・・あ〜!理沙!」窓から離れて出入り口のところまで行こうとする理沙をママは呼び止めた。
「また事故があるかもしれないし、それよりマスターを呼ばないと。」
ママは電話でマスターに状況を報告、そして店まで2人を迎えに来るように頼んでいた。

マスターが来るまでの間、2人はニュースを見ながらカウンター席でぼんやりと待っていた。
爆発事故は、勢力を争っている暴力団勢力の争いによるものとニュースは伝えていた。犯人はまだ逃走中とのこと。
しかし、飲食店の密集しているこの地域では、そんなことも日常の出来事と化している。事故に遭うか遭わないかは確率の問題でしかない。
「ねぇ〜、やっぱりマスターとお店持ったら、もっと安全なところにしない?」
冗談のつもりで理沙は言ったが、幸子ママの目は笑っていなかった。



マスターの横顔(その1) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:36 No.55  

れいなとの店外デート以来、あの男はもう店には姿を見せなくなった。
まだれいなとの付き合いは続いているのか?もうそれは済んだこととしてあきらめるか?理沙の心の中はまだ揺れていた。
だから今日も1週間ぶりで電話してみる。しかし男は電話には出なかった。

毎日だんだんと夏に向かっていた。あと一月もすれば幸子ママと再会して1年になる。つまりはこの世界に足を踏み入れて一年になるということ。
仕事が終わるとママと一緒にクラブに通う習慣はまだ続いていた。
「れいなとも、どこかできちんと話つけないといけないみたいね。」ママはここにきてれいなに関しての処分を考え始めていた。
成績はトップだが、他の女の娘たちからの不満は募る一方で、男を横からさらってゆかれた理沙のケースなどは珍しくなかった。
他の客には手をつけないというのがこの世界での暗黙の掟とはいえ、頭の回転のよさと美貌で、そんな論理までも踏みにじっている。
「マスターも巻き込んで何とかしないと。このままだと他のお店にみんな流れていって、この店も終わりだよ。それに・・・・・」
女の娘だけが懸念事項とは限らない。しかし、マスターのことを口にしようとしたところで、理沙はぐっと押さえた。
頬杖をついている幸子ママ。その目は中をぼんやりと見つめているだけだった。

朝5時というのに、すでに強烈な陽射し。
「れいなとは、2人だけで近いうちに話してみるよ。」
2人は店の前で別れる。幸子ママの背中がいつになくくたびれているように見えるのは気のせいか。



リスク(その10) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:34 No.54  

一人で買い物をしていたときのこと、理沙はふと向かい側の店の前を歩く男女に目を留めた。
理沙の頭の中で、そのとき何かがはじけた。道路を渡ってその2人のあとを追う。息がだんだん荒くなってきた。
「あら・・・・・。」
2人は人の気配を感じたのか、後ろを振り向いた。そして理沙と向き合った。「なんだ、あなたもお買い物・・・・・?」
男はサングラスをかけている。しかし風貌でばればれである。理沙は男に言った「今日は・・・・・れいなと一緒なんだね。」
少し気まずいのか、理沙のことは正面から見つめずに、それじゃ・・・・・と言って男はどこかに行ってしまった。

「れいな・・・・・ちょっとひどいじゃない。」
出勤して更衣室で彼女を見つけると、すぐそばに詰め寄った。周りの何人かの娘たちは更衣室をそそくさと出て行ってしまった。
「ひどいのは・・・・・どっちかしら? 散々気持ちをもてあそんでおいて。肝心なときに逃げてしまって。」
「でも、リスク管理しなくちゃいけないって言ったのは、あんたじゃないの?」
「もちろん・・・・・・言ったけどね。」
理沙の強い口調にもれいなは全く動じていない。指にはさんでいた煙草を灰皿に置いた。
「でも、お客をどれだけその気にさせるかがあたしたちの仕事でしょ? どうしたらうまくいくか考えなくちゃ・・・・ね。もっと頭使ったら?」
そしてこう言い残すと、更衣室を出て行った。
「あたしたちが選ぶんじゃないの。選ぶのはお客さん。そして今回もあたしはあの人から選ばれたのよ。」



リスク(その9) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:32 No.53  

その後、店に彼の現れる頻度が減ってきた。週に3回が、2回、1回に。
理沙には他の客がいたものの、かなり自分に入れ込んでいる客の熱が冷めてくるのには気になった。さっそく電話してみる。
しかし、電話には出るものの、話は前のようにはずまないし、店に来ても態度は前以上に冷たかった。

「あたし・・・・・まだ気持ちが固まらなくて。」
2人だけになったときに、それとなく理沙は彼に話を持ち出した。そして再びよりを戻しましょうといったニュアンスの言葉を口にしたとき、
「いや、いいんだよ・・・・理沙には迷惑かけたね。」
「迷惑って・・・・?」
しかし、彼はそれ以上話をすることはなかった。そしてちょっと寂しそうな表情を見せたまま、ボーイに清算の合図をした。
店から出てゆく彼のことを、通りまで理沙はあとをついていった。そして彼の腕をつかんだ。
「ねえ・・・・・・。」しかし、気持ちを戻して欲しいと思う理沙の願いもむなしいようだった。

ところが、原因は思いもよらないところにあったことに、理沙はそのときはまだ気づいていなかった。

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