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− 連続小説掲示板 −

ここでは「理沙の物語」の詳細ストーリーを書いています。
なお、この掲示板は閲覧専用です。

最近更新が滞っていてすみません。。。。。(^_^;


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新しい店で(その3) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/16(Fri) 23:08 No.122  

渚が言っていた、幸子と由紀との間での冷たい闘いについては、もう店の全員の知るところとなっていた。
後から入ってきた新入りとはいえ、自分の立場が気になり始めている由紀。
それに対して、自分のポジションをなんとかして確立したい幸子。
根無し草の気持ちについては、理沙もわからないわけでもない。しかし今の幸子は理沙の目からも異常に見えた。
最近は理沙が起きる時刻には、早々と幸子は出かける用意をしていることが多くなった。
「ねえ・・・・・・。」
ぼさぼさ頭をとりあえず整えるために鏡の前に行くと、幸子が化粧をしていた。
「毎日毎日、ほんとに大丈夫?」
背中越しに幸子は言った。事務的な口調で「ううん、大丈夫だよ。」
スプレーを軽く髪に吹いて、バッグを持って幸子は立ち上がった。
「待ってよ、そんなに毎日毎日、体壊れるんじゃないか心配。ねえ、ちょっといい?」
そしてダイニングに向かう幸子の前に入って、出かけようとするのを止めた。
幸子は怒ることもなく、しかしやんわりと理沙のことを脇によけようとする。
「心配してくれるのは嬉しいけど、でも、約束があるから。」
「そんな、すぐに終わるからさぁ。」

2人はテーブルについた。
幸子は煙草に火をつけた。「それで・・・?」



新しい店で(その2) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/16(Fri) 23:07 No.121  

「あ〜〜、どうもどうも。」
理沙の隣の男は、場馴れしていないのか少々つまらなそうにしている。
「こんなにぎやかな店は、初めて・・・・?」理沙はちょっと彼の顔色をうかがう。
「いやいや・・・・。」しかし、自己紹介する理沙に対しても、ちょっと、はぁ・・・・と頷くだけ。
他の4人がカラオケで騒々しく歌っているのとは反対に、彼のほうはしぶしぶ歌っているだけ。
なので理沙のほうから彼の気持ちを盛り上げて、気持ちよく飲んでもらおうと思った。
それから1時間、酒がまわって気持ちよくなったのか、ようやく彼は自分から話を始めた。
「ありさちゃんって、歌がうまいんだね。」
「ありがとね。」
他の4人とはすっかり切り離されたような雰囲気だった。
他の4人も相手にしなくなっていた。それまでと同じテンションで相変わらず騒いでいた。
「変なこと訊いてもいいですか・・・・?」
彼の目はうつろになっている。その大柄な体をゆっくりと揺らしながら、う〜〜んと小さく唸った。
「しゃべり方が、なんだか柔らかですね。出身は北のほうですか?」
「よくわかったね。」ますます表情がほころんでくる。弓なりになったその目が可愛らしい。
出身地の話になって、彼の話はますますよどみなく、次々と続いてゆく。
いろいろな昔の苦労話や、自然環境あふれる生活環境の話など、
そして11時をまわるころ、カラオケの残り度数がなくなったところで5人は帰っていった。
理沙はしばらくの間店の前に立ち、彼の姿が見えなくなるまで見守った。



新しい店で(その1) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/16(Fri) 23:06 No.120  

「あら・・・・・。」
相手はまだ気がつかない。
お互いに5メートルほど離れて、そして理沙はちょっと首を傾けて、
「なんだ・・・・・ありさちゃん。」
買い物の帰り、しかしお互いに警戒心は無く、理沙のほうから彼に近づいた。
「この近くにお住まいなんですか?」
「ええ、その先のマンションに。」
お互いに非常に近所に住んでいることを知って、ちょっと危険も感じたが、
しかし、先日店で初めて席を共にしたときも、ごく自然な彼の話し方に理沙は非常に共感を持っていた。
「私も、この道をずっと行った先に・・・・・」
「じゃぁ、今度遊びに行こうかなぁ。」
店で会った時と、そののんびりした話し方は全く変わらなかった。

5人ほどの、おそらく会社の2次会で流れてきたのだろうか、
その男達はボックス席に座ると、店の娘たちと非常にテンション高く騒ぎ始めた。
理沙が相手をしていた客も帰ってしまったので、そのままそのボックス席に付くことになった。
彼らのなかで1人は時々顔を見せる客、他は全くの新規客。
席の一番離れたところで、理沙は他の3人の娘の手伝いといったポジションで座った。



新たな決意(その11) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/16(Fri) 01:32 No.119  

何もしたくなくても・・・・・
ただ、無駄に時間が過ぎているように思えても・・・・・
確実に、前に進んでいる自分に・・・・・
心からの声援を・・・・・

時には周りに翻弄され・・・・・
流されている自分自身に、気づいていても、何もできない・・・・・
そんな状態からなかなか抜け出せなくても・・・・・
前に進む気持ちだけは、決して捨てないで・・・・・

雨が降って、ずぶぬれになっても・・・・・
日照りで全身がからからに乾ききったとしても・・・・・
それでも、前に進む気持ちは捨てないで・・・・・

自分にエールを贈ろう・・・・・
そして確実に前進を続けよう・・・・・
できることから、一歩づつ、諦めることなく・・・・・

暗い客席を再び理沙が見つめると、客の視線がこちらに集中していた。
そして拍手と歓声。
自分が自分でないような気がした。さっきまでステージで歌っていたのが別人のように思える。
しかし、確実に理沙の内では何かが確実に変わっていた。
そのことに理沙自身が気がつくには、まだ少々時間がかかるのだが・・・・・・・。



新たな決意(その10) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/16(Fri) 01:31 No.118  

「ねえ。」客から言われて、我に返る。
ぼんやりと宙の一点を見つめていた理沙は、客の水割りに手をかけた。
「ううん、ちょっとね・・・・」
ステージで、由紀と客がいっしょに歌っている。
幸子は2つ離れたボックス席で、客との会話が盛り上がっているようだった。
別に今相手をしている客を嫌っているわけでないが、なんだか気分が盛り上がってこない。

由紀と客がステージを降りて、しばらくは歌う客がいないのでBGMが店に流れていた。
店の雰囲気に合わせた音楽が多かった、女性ボーカルや、男女のデュエット。
昔なんとなく聞いたことのある曲にも時々出会うことがある。そんなときにはしばらく聞き入りたくもなる。
そして、そのときも聞き覚えのある曲が流れた。
嬉しくなって、理沙はつい客に言った。「ねえ、この曲知ってる?」
客は少しの間BGMを聞きながら考えていたが、「なんとなく聞いたことはあるけど、タイトルは・・・・。」
理沙は手元に置いてあるリモコンで曲を調べた。そして、それと思われるタイトルを発見する。
「この曲、あたし歌ってもいいかしら?」

理沙は一人でステージに立った。
こんなことをするのは自分でも初めてだった。全身が熱くなってくる。



新たな決意(その9) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/16(Fri) 01:30 No.117  

朝まで飲んで、ほろ酔いで気分のいいところで、久しぶりに彼と2人きりになった。
今までは忙しすぎて、自分のことでせいいっぱいだったものの、
やはり気分の落ち着けるところがあるのはうれしいなぁ、と理沙はキッチンで料理をしている彼を見ながら感じた。
「どうした?」
視線を感じて彼は振り向いた。
「え・・・・いや、別に。」
食事をして、彼が出勤するまでの夕方の時間、理沙はベッドのなかで彼といっしょにまどろんでいた。
彼の方は、疲れて早々に寝てしまったので、理沙は一人で天井を眺めているだけだったが、
もぞもぞと体を動かして、その肌のぬくもりを感じてみたりする。そして小さくため息。
だんだんと意識は遠くなり、理沙は寝てしまっていた。
そして何時間かたって、陽も傾きかけたころに理沙は目覚めた。隣にはもう彼の姿はない。
ベッドを出て、もう季節は春なのに肌寒い風を感じるためにバルコニーへ出る。そしてなんということもなく下に見える車の流れを見つめる。

なんとなく、不安な気持ちにかられてくる。
何だろう?何かが背後から理沙を襲ってくるような不気味な感覚。
そんな不安定な状態を、いったい誰が守ってくれるのだろうか?
というよりも、今の理沙はその不安定な気持ちを解消してくれる人物を求めていると言ったほうがよいだろうか。



新たな決意(その8) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/16(Fri) 01:30 No.116  

幸子といっしょに家に帰る。
彼女といっしょの生活も、はや2ヶ月になる。
月給は、理沙の場合は以前の半額。幸子にいたっては3分の1に近い。やはり他の娘のヘルプばかりでは、それほどの稼ぎにはならない。
それでもありがたかったのは、前の店で親しくなった客が何度か店に足を運んでくれたことだった。
「まあ、今までと同じに頻繁に来てくれなくても、嬉しいよね。」
電車の中で幸子はぽつりと言った。理沙も同感だった。
「ねえ、幸子・・・・・・久しぶりにあの店にいかない?」
あしたは2週間ぶりの休み、久しぶりで丸一日ゆっくりできそうだった。
「そうだね。理沙のあのひともどうしてるか心配だし。」

店に入ると、懐かしい、まるで自分の家に帰ってきたような気分になった。
おお・・・・・とか、あら・・・・・とか、なじみの客やカウンターにいるスタッフ達から歓声があがった。
「ごめんね、なかなか来られなくて、やっぱりここが一番落ち着くわね。」
幸子のいつも座る席には他の客がすでにいたが、気を利かせて彼らは別の席に移ってくれた。
「マスター、本当に会えて嬉しいわぁ。」と幸子はオーバーに店長に抱きついたりも。2人はそのままよろけそうになった。
理沙も幸子の隣に座った。そしていつもの笑顔で彼は理沙の前に立った。
「理沙さん、久しぶりですね。また会えて嬉しいですよ。」



新たな決意(その7) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/15(Thu) 01:26 No.115  

幸子が相手にしていた客が帰った。とりあえず控え室に戻る。
そこへやはり客の相手を終えた渚がやってきた。そして幸子の隣に座る。
控え室はちょうど彼女達2人しかいなかった。幸子は渚との間の立場の差を気にすることはあっても、神経質になるほどのことはなかった。
お互いに無言のまま、幸子はやがて煙草に火をつけ、しばらくすると渚もまた煙草に火をつけた。
「ねえ、幸子さん。」
渚に言われて、幸子は彼女に視線を向けた。
「理沙さんと、前は同じ店で働いていたそうね。」
「ええ・・・・あの娘とはその前からの友達なんです。」
そうなんだ・・・・・と。しかしそんな余計なことまでは聞いていないよ、と言いたそうにも見える。
「理沙さんと2人だけで話したときに、ちょっと気になること言われたの。」
幸子は煙草の火を消して、組んだ足の上に両手を置いた。
「あなたと一緒の店で働いていて、理沙さん、あんまり面白くないようだったみたいよ。」
あら・・・・と幸子は驚いているそぶりを見せた。「始めて聞いた話ですね。本当にそんなこと言ってたんですか?」
しかし、内心それほど動揺もしていなかった。
前の店でもよくあった。ライバル同士の娘達に対して、それぞれに根拠のない情報を吹き込んで、さらにライバル同士の関係を悪化させる。
れいなと同じ事やっているのね・・・・・と、幸子は心の中で笑った。
「まあ、あたしはできの悪い娘だったから・・・・・。」
幸子はその根拠のない悪評を、わざと深刻に受け止めているというように、渚の話にしばらく耳を傾けた。



新たな決意(その6) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/15(Thu) 01:26 No.114  

まわりも意識しているのか、どう見てもわざとそうしているとしか思えない。
幸子は店の中で明らかに浮いた存在になりつつあった。
ママは店の娘全員に特に分け隔てなく接しているが、彼女に近い周辺の稼ぎ頭クラスの娘達は、幸子のことをどうも避けているように見える。
「ねえ、理沙さん。」
その稼ぎ頭クラスの娘の一人、渚が、一人で化粧直しをしていたときに後ろから声をかけてきた。
理沙は鏡越しに「渚さん、なにか?」
「幸子さんのことだけど・・・・・。」なにかもったいぶったような話し方、これは何かありそうだと心を警戒モードに切替えた。
「あの人、お客さんとあんまり溶け込めないみたいね。」
え・・・・?化粧をする手を休めて、理沙は渚のほうに振り向いた。
「仕事にはプライドも必要だけど、でもね・・・・・あまり持ちすぎるのもどうかなと思ったりして。」
「で・・・・・あたしに、何か?」できるだけ丁寧な口調で、渚に言った。

化粧を終えて、理沙はフロアに戻った。
幸子が控え室で由紀となにか話しているところだった。幸子のそばに座る。
「ずいぶん長かったじゃない。」
理沙は、ちょっとね・・・・・と適当に話をごまかした。
幸子は由紀と再び話を続けていた。
理沙は、ぼんやりとフロアのほうを眺めながら、渚が再び客の方に戻ってゆくのを確認した。
<・・・・・あの人についていっても、この先いいことないかもね・・・・>
そして渚が最後に見せた不気味な笑みが非常に気にかかった。



新たな決意(その5) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/15(Thu) 01:22 No.113  

こんなことを言うのもなんだけど・・・・と由紀は前置きして、
「幸子さん、昔は店のママやっていたんでしょ?」
まあ、いつかはわかることだからと理沙にも心の準備はできていた。「そうよ。」
「この店でママになるには、かなり努力しないとダメよ。」
道端で2人、タクシーを待っていた。
由紀はバス停の標識に寄りかかって、腕組みしている。
「幸子さんにはきつい言葉かもしれないけど、もしこの店でママになろうとしたら他人の3倍は努力しないと。それとプラスアルファ。」
タクシーがやってきた。
昇りかけの陽射しがビルの壁に反射して眩しい。ぼんやりした気分のまま2人の会話はそこで途絶えた。
「理沙。」由紀が呼んでいる。
気がつくと、駅に近い由紀の家の近所に来ていた。
「さっきの事だけど、これはこの店で半年間働いての結論。結果が全てじゃないけど、やっぱり店の中でいいポジションにつきたいでしょ?」
まあね・・・・理沙はそこまで言いかけて、喉の痛みに声がかすれた。
「でも、いろいろと頑張ってみるつもり。」
「いろいろって・・・・何を?」
由紀の家に到着した。
再び駅に向かうタクシーの中、理沙は一人で由紀の言葉の意味を考えながら、ぼんやりとした意識の中でまどろんでいた。

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