マスターの家に先に向かっていた店の娘から、幸子ママの携帯電話に連絡がきた。
「家にいる様子はないみたいだけど、入り口で待っていてもらうことにしたよ。」
そうやって話をしている間に、次の電話がかかってきた。
幸子ママが追跡を頼んでいた、知り合いの人から、マスターのその後の足取りについての情報が入ってきたようだ。
「タクシーに乗ろう。」そしてすぐにタクシーを拾い、幸子ママは運転手に言った。
「羽田空港に向かって。」
「そこにいるの?」理沙に小さくうなずくと、さらに運転手に指示する「とにかく急いで。」
理沙の客からも、頼んでいた情報が入ってきた。
銀行でお金を引き出して、すぐにタクシーを拾って、れいなと近くの駅で合流して、そのままタクシーで空港に向かっているとの事。
すでに空港に到着しているから、搭乗手続き中かもしれない。
「なんとしてでも止めて!」
さっきの知り合いに、幸子は必死に頼んでいる。
空港に到着しているマスターの所在確認と、出国できないようになんとか搭乗手続きの段階で止めること、
常人ではとてもできないようなすばやい対応で、2人はマスターの後を追う。
そしてもしかしたら、れいなも一緒かもしれないという焦りの気持ちも半分。