食後、理沙は彼の弾くギターを聴きながら、彼のいつもは見せない違った一面に少し驚かされた。
店で客を相手にしているときは、非常に物静かな人と思っていたのだが、
彼の弾くギターには時には激しさあり、物悲しさあり、そして彼女に優しく語りかけるようなところもあった。
「集まって練習する時間がなくてね・・・・・ちょっと腕が鈍って。」
「そんなことないよ。」そして理沙は彼の腕からギターを受け取り、ちょっと弾いてみるマネをしてみせた。
「あたしも・・・・ちょっと憧れてね。でもすぐにあきらめちゃった。なにせ飽きっぽい人間だからね。」
「そうかな・・・・・?」
そのあとも、好きなアーティストの話などをしながら、結局のところお昼近くまで彼の家にいることになってしまった。
しかし、睡眠不足で眠いこともなく、そのまま理沙は自分の家に帰り、
そのまま出勤することにした。
・・・・今のままでいるつもりはないからね・・・・・・彼の言った言葉が理沙の頭の中に少しだけ引っかかっている。
それが理沙に対しての言葉だということに、彼女はまだ気づいていなかった。