030018
− 連続小説掲示板 −

ここでは「理沙の物語」の詳細ストーリーを書いています。
なお、この掲示板は閲覧専用です。

最近更新が滞っていてすみません。。。。。(^_^;


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変わらぬ気持ち(その4) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/13(Tue) 01:05 No.83  

そのあと、理沙と直子は2人で家路についた。
外の風は強い、コートの襟がめくれて顔に当たる。
「幸子・・・・本当にどうにもならないの?」
幸子ママは黙ったまま歩きつづける。風の音で聞こえていないのかと思い、もう一度話しかけると、
「考えがなかなかまとまらなくて。突然に店が終わりになって、それじゃあたしたちどうしたらいいの・・・・?でも、それじゃ済まないでしょ。理沙。」
2人は喫茶店に入り、ゆっくり話のできる奥のテーブルに座った。
「もしオーナーがどうしても店をたたむのなら、あたしはみんなを引き取ってどこかで店を始めようと思ってる。マスターとね。」
寒さで冷え切った体に、暖かいコーヒーがじんわりとしみてゆく。ママは大きく息をついた。
「こんな形で独立できるとは思っても見なかったけど、なんだか複雑な気持ちね。あとは・・・・・・。」
頬杖をついて、なんとなくうかない表情のママ「あの人の気持ち次第なんだけどね・・・・・。」
「頑張ろう。あたしも応援するよ。・・・・本当に好きなんでしょ?」

一日一日があわただしく過ぎていった。
昼間は同伴、夜は常連客のお相手。そしてそのあとも客との早朝のデート。
店が始まる前の待合室。女の娘たちのほとんどはソファで寝ている。
理沙は彼女たちを見ながら、店の現在の危機的状況を知ったら、果たしてどう反応するだろうかとふと思った。



変わらぬ気持ち(その3) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:55 No.82  

「ちょっと心配。」
今日の売上の計算をしている幸子ママのことを、理沙はチラ・・と覗きこんだ。
「でも、今月はみんなが頑張ってくれているし。落ちついたらまとめて休みとりたいね。」
「でも、そればかりじゃないでしょ?心配事は。」
ママは手を休めて、顔を上げた。
イスにもたれかかって、大きく息をついた。
「マスターとは、最近どう・・・・?」
両手を頭の後ろにまわして、そうね・・・・・とつぶやいて、
「心配しすぎなのかな・・・・考えれば考えるほどあの人のことが気になって、でも、それがおせっかいだって言ってくるし、そうなればね。」
理沙は向かいのソファーに座った。
「心配だよね。マスターは大丈夫なのかしら?」
しばしの沈黙、やがてママは言った。
「理沙、絶対に内緒よ。・・・・・・それでね。」

背筋が冷たくなるようなことが次々とママの口から出てきた。
オーナーが、年末の売上が目標達成できなかった場合は、店を売り渡すかたたんでしまうつもりだということは、以前にママから聞いていた。
しかし実際は、オーナーは自分のメインの事業が傾いていることを理由に、年明けに店を売り渡すつもりでいるようだった。
みんなに発破をかけて売上を伸ばすのは単なる口実で、実際には最後に稼げるだけ稼ごうというオーナーの計画にマスターは振り回されているだけのこと、
「だからミーティングの時のあの人を見ているとね・・・・・。」
煙草を吹かしているママは、ぼんやりと遠くを見つめていた。



変わらぬ気持ち(その2) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:54 No.81  

「マスターと直子ママが来ましたね。昨日。」
疲れて倒れてしまいそうだったが、久々にクラブに立ち寄ると、バーテンが理沙に言った。
「奥のボックス席で、ずっと2人で話をしていましたよ。なんだか・・・。」
彼の話によると、仕事の話はもちろんだが、またささいなことでの気持ちのすれ違いが再燃しているようだった。
以前のれいなの件がその後どうなったかは理沙は気にもとめていなかったが、その可能性も否定できない。
「店がなくなったら、2人で別な店でも作るつもりでいたらしいけどね、話がまとまっていないのかなぁ。」
それから空がようやく白くなるころまで、理沙はカウンター席でバーテント2人で飲んだ。
思えばここ1ヶ月以上彼とも会っていない。
「最近、ギターの練習してる?」ふと、彼が演奏しているところが見たいなと思った。

「みんなのおかげで順調に目標達成している。この調子で、忘年会、クリスマスのパーティーイベントにも頑張って欲しい。」
まだまだ気は抜けないが、娘たちのモチベーションは最高に近かった。
去年以上にボーナスも出るかもしれない。
その日の夜も、客は次から次へとやってきて、理沙も指名客の対応に追われ、家に帰ったときには服のままベッドに倒れるようにして寝てしまっていた。



変わらぬ気持ち(その1) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:53 No.80  

年末も近くなったある日。
毎年のことだがマスターのミーティングでの話は、いつも以上にテンションが高かった。
「一人あたり、いつもの倍、いや3倍働くつもりでがんばってほしい。」
みんなの表情は人それぞれだった。
いつものように涼しい笑顔のれいな。気持ちのうえではもうすでに他の娘たちを引き離している。
理沙は幸子ママの表情をチラ・・・と見た。
マスターのことを心配そうに見つめている。
今年は本当に年を越せるかしらね・・・・・・と、何日か前に彼女がぽつりと漏らしてた言葉が、妙に気になっていた。

ミーティングではいつも威勢のいいところを見せているマスター、
しかしそのマスターも、実際のところはオーナーの下で働く一人のサラリーマン的存在でしかない。
オーナーの下でマスターがかなりのプレッシャーを感じていることは、理沙も幸子ママから時々聞かされている。
しかし、今年の年末の成績次第では、マスターは解任か、又は店の売り渡し、閉鎖をオーナーは考えているようだった。
だから幸子ママは焦っていた。
「でも、いつもの笑顔だけは忘れないように。」ミーティングをマスターはこう締めくくった。



妹との再会(その9) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:52 No.79  

数日後、直子から再び電話があった。
「この前はありがとうね。」
画面の向こう側の妹の表情には、先日会ったときのような暗さはなかった。なんとなく晴れやかなようにも見える。
「父さんと母さんには、言ったよ。あたしだってもう責任をとってもいい年だし。自分で生活しながらいろいろと社会勉強してみるってね。」
理沙は直子の口からそんな言葉が出てきたのに少し驚くと同時に、自分が直子に言ったことをそのまま親に言ったのではないかと、笑いたくもなった。
「でも・・・・まあ、直子がそう決めたのなら、いいじゃない。あとはこの前も言ったように・・・・・・。」
そして直子が家を出て行けば、両親も少しは冷静になって話をできる状態にもなるだろうと思った。
2人がきちんと話し合うかどうかは別として。
いずれ近いうちに、理沙も両親に話をすることを直子に伝えた。

11月も半ばになり、年末商戦がだんだんと激しくなってくるころ。
お客の懐状況を想像しながら、理沙たちは客に対して巧みに営業活動をしていた。
直子は住むところが見つかるまでは、しばらく理沙の家に住む事に決めたようである。早ければ年明けあたりに。
しかし、理沙の生活どころか将来を揺さぶるような事態がすぐそばまで迫っているとは、そのとき当事者以外はまったく気にもとめていなかった。



妹との再会(その8) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:52 No.78  

外は天気が悪く、この時期にしては珍しく初冬のような寒さだった。
言葉を特に交わすことなく、理沙と直子は駅までの5分ほどの道のりを歩いた。
「また、電話頂戴ね。」と理沙。
ううん・・・・・と直子は小さくうなずく。
「父さんと母さんにも、近いうちに会いに行くから。でも今日会ったことは内緒にしてよ。」
「わかった。」
駅の改札の前、2人は立ち止まった。「じゃぁ、またそのうちにね。」
直子が何か話したそうな様子。
しかし、そのまま改札に向かっていった。
改札の直前で、また理沙のほうを振り返る。
理沙は小さく手を振った。
「元気だしなよ。」

直子が乗っていったであろう列車を見つめ、橋を渡ってゆくまで理沙は駅前広場に立っていた。
さてと・・・・・まだまだ吹っ切れない気分はあったが、理沙は買い物にでも行こうかとそのまま近くのスーパーへと足を向けた。



妹との再会(その7) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:51 No.77  

寝室での物音に目覚める。
直子がようやく起きてきたようだった。
髪の毛を振り乱し、悲惨な姿の彼女。がらがらな声で「ここ、姉さんの家?」
「そうだよ。」理沙はその姿に笑いそうになった。「かなり気持ち悪いでしょ。大丈夫?」
しかし直子は、
「う〜ん、前にもこれと同じようなことはあったけどね。」
なんだ、最初じゃないの?・・・と突っ込みを入れたくもなったが、理沙はジュースを取りに行くためにキッチンに行った。

「いいところだね。」スパゲッティを食べながら直子は部屋の中の家具類に目を向けていた。
まあ、結構高かったけどね・・・・と、幸子ママからこのマンションを紹介されたときの話などをしばらくしたが、
一人で生活することを夢見ている直子に、理沙は気になっていた。
「でも、本当に一人で生活するつもりなの?なんだか心配だよ。」
コーヒーカップに口をつけたまま、直子はちょっと考えていた。
昨日飲んでいたときに理沙が言ったことが強烈だったかは知れないが、自分の考えを少し反省しているようにも見える。
「もし、その気なら、しばらくはあたしのところで生活したら、どう?」



妹との再会(その6) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:49 No.76  

気分が高ぶっていた直子も、ピークが一気に過ぎたのか、力が抜けてそのまま寝込んでしまった。
理沙はとりあえず疲れた直子をそのままに寝かせておいて、しばらくは一人で飲んでいた。
久しぶりに見る直子の寝顔を見る。昔とあまり変わっていない。
ふと自分が直子に大見栄を切って言ってしまった言葉を思い出していた。
<・・・あたしにはやりたいことがあるの、自分ひとりの力でやってきた・・・>
でも、本当はまだまだ何がしたいのかもわかっていない。
時計を見ると、もうすぐ12時になろうとしていた。

まだまだ酔いがさめない直子をタクシーに乗せて、とりあえず家に帰る。
朝まで寝かせれば、直子も回復するだろう。
家に着いたのはいいものの、まるで歩けない直子を家に入れるのには一苦労した。
ごめんね・・・・ごめんね・・・・・うわごとのように直子はその言葉を繰り返していた。
ようやくベッドに寝かしつけ、酔いが覚めてしまったのでビールを飲み始める。
深夜の映画を見ていたのだが、理沙はいつの間にかテーブルに突っ伏して寝てしまっていた。



妹との再会(その5) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:49 No.75  

飲ませて後悔したが、そのときにはもう遅かった。
直子はカクテル2杯を一気に飲み干して、酔いが一気にまわっていた。
「姉さん。」
絡みつくような口調で理沙に迫る。「父さんと母さんが別れようとしているのも、姉さんのせいなのよ。」
理沙は、飲ませて一時的に暴走しているのがわかったので、なんとかこの場を収めたいと思って直子の肩に優しく手をかけた。
「直子の気持ち、わかるよ。」
でも・・・・・と言いかけて、直子はさらに「でも、ぜんぜんわかっていない。」
妹のだんだんエスカレートする気持ちに、押さえにまわっていた理沙の気持ちもだんだんと火がついてきた。
「何が?」少しトーンを落として理沙は言った。
「親のことも考えないで家を飛び出すのは、ただ逃げているだけでしょ?」

ふぅ〜と理沙は一息ついた。
少し視線を落として、再び直子を正面から見つめた。
「確かに、あたしは家を出た。それは直子から見たら逃げているように見えるかもしれない。でも、」
直子も目をそらしていなかった。
「あたしにはやりたいことがあるの。家は出たけど、自分ひとりの力で今日までやってきた。直子の一人で暮らしたい気持ちとはレベルが違うのよ。」



妹との再会(その4) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:48 No.74  

理沙はコーヒーに口をつけた。
「本当にそれで良かったの・・・?」直子は言った。
直子にも本当のことは何も言えないで家を飛び出してしまった。そのあとの冷たい家庭の雰囲気の中で、いったい直子はどんな気持ちだったのか。
「結局、何も深く話しないで、それって姉さんの自分勝手だと思う。」
母親の愚痴を聞いてしまった次の日から、理沙と母親の間には変な心の壁ができてしまった。
しかし、父親にもなかなかその深い悩みを話せないまま、今日まできてしまった。

理沙と直子は勘定を済ませると、再び夜の街にでた。
「今日は、飲んでもいいかな・・・?」
唐突に直子は言った。
いつもと違う直子の姿に、今日はきつくとめる気にもなれない「少しだけだよ。」
そして2人はおちついてゆっくり飲めそうな雰囲気のショットバーに入った。
「本当はね、友達とけっこう隠れて飲んでいたんだ。」
お互いに会話が今まで少なかったので、初めてきくような事実が次々と直子の口から出てくる。
「じゃあ、一人暮らしの本当の理由は・・・・男?」
やめてよ・・・・・・・直子は理沙の肩をぐっとこづいた。

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