そのあと、理沙と直子は2人で家路についた。
外の風は強い、コートの襟がめくれて顔に当たる。
「幸子・・・・本当にどうにもならないの?」
幸子ママは黙ったまま歩きつづける。風の音で聞こえていないのかと思い、もう一度話しかけると、
「考えがなかなかまとまらなくて。突然に店が終わりになって、それじゃあたしたちどうしたらいいの・・・・?でも、それじゃ済まないでしょ。理沙。」
2人は喫茶店に入り、ゆっくり話のできる奥のテーブルに座った。
「もしオーナーがどうしても店をたたむのなら、あたしはみんなを引き取ってどこかで店を始めようと思ってる。マスターとね。」
寒さで冷え切った体に、暖かいコーヒーがじんわりとしみてゆく。ママは大きく息をついた。
「こんな形で独立できるとは思っても見なかったけど、なんだか複雑な気持ちね。あとは・・・・・・。」
頬杖をついて、なんとなくうかない表情のママ「あの人の気持ち次第なんだけどね・・・・・。」
「頑張ろう。あたしも応援するよ。・・・・本当に好きなんでしょ?」
一日一日があわただしく過ぎていった。
昼間は同伴、夜は常連客のお相手。そしてそのあとも客との早朝のデート。
店が始まる前の待合室。女の娘たちのほとんどはソファで寝ている。
理沙は彼女たちを見ながら、店の現在の危機的状況を知ったら、果たしてどう反応するだろうかとふと思った。