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− 連続小説掲示板 −

ここでは「理沙の物語」の詳細ストーリーを書いています。
なお、この掲示板は閲覧専用です。

最近更新が滞っていてすみません。。。。。(^_^;


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妹との再会(その3) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/12(Mon) 00:48 No.73  

子供のころはあまり意識はなくても、成長して将来のことを真剣に考える年頃ともなると、親のことが非常に気になっていた。
直子に対しては普通に接していても、母親との心の中での溝については、理沙としてはなかなか埋めることができなかった。
17歳になってまもないある日、理沙は親同士の深夜の会話を盗み聞きしてしまった。母親は涙声で、
<・・・頭ではわかっていても、どうしても心では理解できなくて。ねえ、あなた、今になってこんなこと言うのはなんだけど・・・>
理沙の心を、氷のように冷たいものが締めつけた。
<・・・あの娘、あたしには合わない。・・・>
何を言っているんだ、と父は母にきつい言葉をぶつけた。
声を押し殺すような母親の泣き声。
そっと理沙は自分の部屋に戻る。そして聞きたくないそのあとの会話から遮断するつもりで布団に包まって無理やりにでも寝ようとした。
しかし、気分が高まってなかなか寝つけないまま、いつの間にか朝になっていた。

そんな閉塞感に耐え切れなくて、家を出た。
だから同じようにして今一人暮らしをしようと考えている妹の気持ちが痛いほどよくわかった。
「でもね、姉さん。」
直子はまっすぐに理沙のことを見つめた。



妹との再会(その2) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 23:02 No.72  

フルコースの食事をした。
理沙は何気なくワインも飲んだが、直子のことも思って少ししか飲まなかった。
気分もようやくリラックスしてきて、2人はようやく食事の味以外の話に入っていった。
「一人で生活するのって、結構大変だった?」
「そうね・・・・・・。」
家を出てから最初に住んだのは、下町の木造のひどいアパートだった。
たった一間の生活からスタートして、わずか1年半での生活の変化についての話に、直子は聞き入っている。
「幸子と会っていなかったら、今ごろはどうだったろうね。」
もちろん、直子には言えない生活での苦労はたくさんあった。
だから昔からひっこみがちな性格の直子に、都会での一人暮らしができるのかは、非常に気になるところだった。
そんな心配に思いをめぐらせていた理沙に、直子は言った「姉さん。」
窓の外を眺めていた理沙は、直子を見つめる。
「父さんと母さんが、どうもうまくいっていないの。」
どういうこと・・・・・?と聞き返すと、
「もしかしたら、別れるかもしれないよ。」



妹との再会(その1) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 23:01 No.71  

今日会うまでに、直子には自分の仕事についてはおおよそのことは話していた。
幸子とも共通の友達であったし、それゆえに直子も安心しているようだった。
「もう17になったんだっけ?」
「そうよ。」直子は理沙の歩くペースも気にせずにすたすたと歩いていた。
「あの角を曲がって、少し行ったところだよ。」
その角を曲がったところで、彼女はとあるビルの2階の窓を指さした。
「落ち着いてなかなか雰囲気のいいところだよ。」
自分の住んでいる近所のように、なにもかも把握しているのか。そんなことを考えながら理沙は妹のあとを追ってビルの階段を上っていった。

常連のように振舞っている妹。
自分の方が知っているはずと思っていたのに、今日は直子にすっかりリードされている。そしてメニューを見ないで自分の注文を済ませる。
「じゃあ、あたしはこれで・・・・。」と、理沙は店員にメニューの写真を指差して注文する。
さて・・・・・と、直子は早速出されたコーヒーに少しだけ口をつけると、言った。
「姉さん、あたしも近いうちに一人で生活しようと思って・・・・。」



メッセージ(その7) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:56 No.69  

電車を降りて、急ぎ足で階段を下りる。
雑踏の中を抜け、交差点を渡り、理沙は待っているであろう直子のことを想像していた。
起きるのが遅れて、待ち合わせの時刻にもう10分も遅れていた。
石畳のへりにつまづいてよろけそうになる。道端に立っている男女に軽くぶつかる。ちょっと頭を下げただけでそそくさとまた走り出す。
だんだんと息があがってくる、角をまがって再び表通りに出る。待ち合わせの店の前まであと100メートルほど。
妹の姿は見えない。しびれを切らせて帰ってしまったのか。でも、それなら電話をくれるはず。
店の手20メートルほどのところで、人ごみの中に立っている直子の姿を見つける。そして彼女も気づいたようだ。

「ごめん、遅くなって。」声がすっかりかすれてしまった。
「大丈夫。」
白のブラウスとスーツ、そしてちょっと控えめの化粧の直子。
「とりあえず・・・・食事でもしようか。」
呼吸はもう落ち着いていたが、なぜか理沙の気持ちはまだまだそわそわしていた。



メッセージ(その6) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:55 No.68  

ようやく空が白くなりかけたところで家に帰った。
パジャマに着替えて、テーブルに座り、煙草に火をつける。
壁面スクリーンの通信販売チャンネルの映像をぼんやりと眺めながら、頭の中では妹とのことを考えていた。
何を話そうか・・・・・会っても話をすることがなくて、会話に詰まってしまいそうだった。

はじめて直子に会った日のことは、もう記憶の中でかなりぼやけている。
しかし、じっと見つめるその目つきは、今でも変わりはない。
母親が亡くなって4年後、4歳の理沙が再婚した新しい母親と初めて会ったとき、直子は母親の後ろに隠れてなかなか出てこなかったことは覚えていた。
<・・直子ちゃん・・>
理沙は、新しい母親の後ろにまわって、直子のそばに寄った。
しかし、人見知りの激しい直子はなかなか理沙に顔を見せない。
<・・ほらほら、お姉ちゃんに挨拶しなくちゃ・・> と、母親は直子の頭をやさしくなでる。
理沙は直子の後ろからやさしく抱きついた。
そのとたんに、直子は小さな声で泣き始めた。

陽射しがだんだんと部屋の中に差し込んでくる。
通販番組は終わり、ニュースに変わったことも知らずに、理沙はテーブルに突っ伏して寝てしまっていた。



メッセージ(その5) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:54 No.67  

「ありさちゃん・・・。」
客から2度目に声をかけられて、ようやく我に返った。
「どうしたの・・・・?ぼ〜っとしちゃって。」
ううん、何でもないよ。と首を振り、理沙は水割りを作り始めた。

「あした、妹と会うのよ。」
仕事が終わって、2週間ぶりでクラブに一人で寄った。
「妹さんって、どんな人なんですか?」
理沙は胸ポケットから手帳を取り出した。その中に一枚の写真が入っている。
バーテンは写真を眺めながら「あ〜〜、理沙さんよりも綺麗。」
おいおい・・・と理沙はバーテンの頭を軽くたたく。
しかし笑いながら「幸子ママも同じこと言ってたよ。同じ兄弟でもこんなにも違うのかなぁっていつも思うよね。」
理沙は再び写真を手帳に収めて、カクテルに口をつけた。
「でもね・・・・・本当のところはね、妹とは母親違いなんだよね。」
バーテンの口元が、ほんの少しだけこわばった。一瞬の沈黙。
そうだったんですか・・・・と彼はぽつりと言った。
「ああ、そんなに気を使わなくていいのよ、妹とは今もうまくやっているからさ。」
そして理沙はカクテルのお代わりをバーテンに頼んだ。



メッセージ(その4) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:54 No.66  

電話を切った後で、気分が次第に重くなってくる。
会話には少しも重苦しいところはなかった、直子の表情にもそんなことは全く感じられない。
カーテンを開けて、すぐにでも雨の降りそうな外の風景を眺める。
それとも、やはり気持ちを取り繕っているだけなのかも・・・・・・と思ったりもする。
今の天気同様、気分はそのあとも出勤するまで晴れなかった。

「今度の週末に、会うことにしたんだ。」
へぇ・・・・と幸子ママ。今日も店を終わってから居酒屋で飲む。
「もうかなり会っていないでしょ?」
「でもね、1年半しかたっていないんだよね・・・・5年たっているかと思った。」
「1年半でも長いでしょうよ。」
幸子ママには、自分がなぜ家を出て一人で生活をはじめたのか、そのいきさつについてすでに話をしている。
そして、幸子とは昔から姉妹2人も含めた付き合いをしていたので、幸子も直子のことを自分の妹のように思っていた。
だからいつも気にしていることを、幸子ママはぽつりと言った。
「うすうす感じていたんじゃないの?・・・・本当の理由を。」



メッセージ(その3) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:53 No.65  

昼と夜が反対の生活をしてるので、家に帰ってから直接電話するわけにもいかない。
なので、理沙は妹に伝言メッセージを入れておいた。
<直子、昨日は電話くれてありがとう。昼間だったら電話くれてもいいよ。それじゃ。>
その日の昼間、いつも起きる時刻のお昼近くに、電話が鳴った。
もぞもぞと這いつくばって、受話器を取る。
番号表示を確認する。予想した通りそれは直子からの電話だった。
乱れている髪を手串で整えて、画面に向かう。
「ああ、直子ね。ごめん・・・・電話くれたのに、仕事に行っていたから出られなかったのよ。」
「ううん・・・・いいよ。」
その声は予想していたより軽かったので、理沙はとりあえず安心した。
自分の部屋なのだろうか、しかし自分たちが今まで住んでいた雰囲気とは違った風景が写し出されていた。
「ああ・・・ここ、あたしも一人暮らしをはじめたのよ。東京の郊外だからなかなか静かでいいところだよ。で、姉さんは今どこに住んでるの?」
「お台場よ。ま、あんまり広いところじゃないけどね。」
「なに言ってんのよ、結構贅沢なところに住んでいるみたいね。」
お互いの近況を話しているだけで10分ほどたってしまった。
「ねえ、久しぶりで会わない?」



メッセージ(その2) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:52 No.64  

「ちょっと、つかぬ事きいていい?」
次の日出勤して、幸子ママに聞いた。
「あたしの妹に、マンションの電話番号教えたりした・・・・?」
幸子はあっさりと「ああ、教えたよ。今日店の近くの交差点で声かけられて・・・・びっくりしたよ。で、それが何か?」
理沙は幸子ママの肩に手を置いて、そのまま更衣室に入っていってしまった。

何も言わずに突然家を飛び出してから2年近く。
妹とはその後まったく連絡をとっていない。個人用の電話番号をそのあと幸子から教えてもらったが、かける勇気がでてこない。
何も言わないで家を出て、そのことをかなり根に持っているだろうと思うと、会話にも詰まってしまいそうだ。
非常階段の踊り場で、理沙は妹の個人用番号にかけた。
どきどきする・・・・・・しかし、話中。
5分ほど待って再びかけたが、まだ話中である。
開店まであと10分、ミーティングが始まりそうなので慌てて店に戻った。



メッセージ(その1) 投稿者:理沙の旦那 投稿日:2004/04/11(Sun) 22:52 No.63  

いつものように朝の帰宅。
10月にもなると、夏のように家に帰るころにちょうど日の出ということはもうない。
部屋に入り、壁面ディスプレイのスイッチを入れ、コントローラーに蓄積されたメールを呼び出す。
出勤中に受け取ったメッセージが表示される。
しかし、理沙は画面には目もくれずに服を脱いでそのまま寝室に入っていった。

10分ほどして、化粧も落としてパジャマに着替え終わる。
台所に入り、冷蔵庫からオレンジジュースの瓶を取り出すと、再び居間に戻る。そしてテーブルについて情報パッドを手にとる。
メッセージはたいていは店の客からのものだった。週末のデートの約束、今週は忙しくて店に行けないよという会社からの悲痛な伝言。
画面は見ずに、目は情報パッドの芸能情報を見つつ、背中で彼らの声を聞いていた。

10件目のメールが開かれる。
珍しく女性の声が聞こえてくる。
情報パッドに注意を向けていた理沙は、その声をきいて背筋に冷たいものを一瞬感じ、はっ・・・・・とした。
「姉さん・・・・・久しぶりだね。」

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